
鉄筋コンクリート構造(RC構造)は、引張力に強い鉄筋と圧縮力に強いコンクリートを組み合わせた構造で、耐震性・耐火性・耐久性に優れることが大きな特徴です。
参考)鉄筋コンクリート構造 - Wikipedia
木造や鉄骨造と比べて自重は重くなりますが、その分、地震時に揺れがマイルドになる傾向があり、中規模以上の病院や診療所ビルなどで広く採用されています。
参考)建築構造の1つ「鉄筋コンクリート造」とは?基本的な特徴を知ろ…
RC構造は、大きく「ラーメン構造(柱と梁の骨組み型)」と「壁式構造(耐力壁で支持する型)」に大別され、それらを組み合わせた壁式ラーメン構造も多く、柱スパンの計画しやすさからマンション型の医療ビルに使われるケースが増えています。
一方で、体育館や展示場のような「大空間」を求める場合には鉄骨造(S造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の方が経済的であることが多く、大規模なホールを持つ医療施設では構造種別を使い分けて設計されます。
参考)鉄骨鉄筋コンクリート構造 - Wikipedia
日本では関東大震災以降、耐震性の高さから鉄筋コンクリート構造が急速に普及し、現在の建築基準法や各種耐震設計基準でも、RC構造は代表的な構造形式として詳細な設計条件が整備されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001396989.pdf
RC造では柱・梁の断面をある程度自由に設定できるため、病棟や外来部門、検査部門など異なる用途が混在する医療施設でも、フロアごとのレイアウトの自由度が比較的高い点がメリットです。
参考)RC造とは?素材の弱点を補い合う耐久性に優れた建築構造。自由…
ただし、鉄筋コンクリートは硬く脆い性質を持つため、ひび割れの制御や耐久性確保のために、かぶり厚さ(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)や配筋ピッチなど細かな仕様が建築基準法やJIS規格で規定されています。
これらの仕様は、耐震性能だけでなく、鉄筋の腐食防止や火災時の耐火性能にも直結しているため、医療施設の長期安定運用には、設計段階から慎重な検討が必要です。
木造や鉄骨造と比較した構造上の特徴は、以下のように整理できます。
構造種別の違いと基礎的な特徴については、以下の国土交通省資料が参考になります。
建築構造設計基準(国土交通省):各構造種別の設計条件と安全性評価の概要を確認できる資料
鉄筋は引張力を受け持ち、コンクリートは圧縮力を受け持つため、地震時の揺れによる複雑な応力を部材全体でバランス良く負担できます。
その結果、耐震性が高く、適切な耐震設計と施工が行われたRC造医療施設では、大地震後も構造躯体に致命的な損傷が生じにくく、機能継続の可能性を高めることができます。
参考)https://www.mext.go.jp/content/1388486_2.pdf
コンクリートは不燃材料であり、火災時にも延焼を抑え、火の回りを遅らせる効果があります。
参考)鉄筋コンクリート - Wikipedia
鉄筋がコンクリートに覆われているため、鋼材が直接高温にさらされる時間が短く、構造部材の耐火性能が高いこともRC構造の特徴です。
この耐火性は、医療ガス・電気設備・大量の医療機器を抱える医療施設にとって重要であり、火災時の避難時間の確保や救急医療機能の維持に寄与します。
鉄筋コンクリート構造は、適正なかぶり厚さと配筋、コンクリート品質が確保されていれば、塩害や中性化への耐性も高く、数十年規模での医療施設運用を前提とした建築計画に向いています。
ただし、海岸部や除雪塩の使用が多い地域などでは、塩害による鉄筋腐食やかぶりコンクリートの剥離が問題になることがあり、補修計画を含めた耐久設計が重要です。
RC造の耐震性・耐火性・耐久性を体系的に解説した専門資料として、以下が参考になります。
鉄筋コンクリート構造は、断熱性や遮音性にも優れているとされ、外部騒音や隣室からの音を抑えるうえで有利な構造です。
厚みのあるコンクリート壁・床は、音を伝えにくいため、病室の静粛性や手術室・集中治療室の音環境確保に役立ちます。
また、外部騒音の多い幹線道路沿いや都市部の救急病院では、RC造による遮音性が患者の睡眠やスタッフの集中力に影響する場面も少なくありません。
断熱性については、コンクリートそのものが熱伝導率の低い素材であるものの、躯体のみでは「夏は暑く冬は寒い」と言われることがあり、断熱・通気の設計が重要です。
コンクリートは一度蓄えた熱をゆっくりと放出する性質があり、外気温の変化が室内に伝わるまで時間差が生じるため、昼夜の温度差が大きい地域では温熱環境計画が医療施設の快適性に直結します。
適切な断熱材や外断熱工法を組み合わせることで、RC造でも安定した室温環境を実現でき、患者の体温管理や術後管理にも好影響を与えることが期待されます。
一方で、コンクリートは吸湿性が高く、結露やカビが生じやすいという指摘もあります。
医療施設では湿度が高くなりやすい場所(リハビリ室、透析室、浴室周辺、洗浄滅菌部門など)で、結露対策や換気計画を怠ると、カビや真菌の増殖リスクが上がり、感染対策上の懸念につながります。
したがって、鉄筋コンクリート構造の環境特性を理解したうえで、断熱・換気・除湿・空調を組み合わせた総合的な環境設計を行うことが、医療施設にとって重要です。
RC造住環境の断熱性・遮音性の考え方については、以下の資料が分かりやすくまとめています。
RC造とは?耐久性に優れた建築構造(UR都市機構):断熱・遮音・住環境の特徴を平易に解説した記事
鉄筋コンクリート構造の柱スパンは、経済スパンと呼ばれる5〜7m前後の範囲で計画されることが多く、病室や外来診察室、検査室を並べるレイアウトに適した寸法帯です。
この範囲で柱を配置することで、居室側に採光・換気を確保しつつ、廊下側にユーティリティやスタッフ動線をまとめる「病棟型のプラン」や「診療所ビル型のプラン」を組みやすくなります。
一方で、鉄筋コンクリート構造は一度躯体をつくると、増改築や間仕切り変更に大きな制約が生じることがあります。
構造壁や耐力壁の位置を変更することはほぼ不可能であり、階段やエレベーターシャフト、コア部の位置も大きく変えられないため、将来の診療科目変更や機能再編を想定した計画が重要です。
医療機能は、診療報酬改定や地域医療構想によって変化し続けるため、RC造医療施設では「柔軟な内装」「設備配管の更新しやすさ」を補う設計戦略が求められます。
例えば、以下のような工夫がレイアウト・設備計画で検討されています。
こうした視点は、建築基準法や耐震診断・改修に関する文部科学省の資料にも示されており、既存RC造医療施設の増改修を検討する際の参考になります。
鉄筋コンクリート造の耐力度調査(文部科学省):既存RC造建物の耐震診断・改修の考え方を示す資料
鉄筋コンクリート構造の特徴は、医療安全や事業継続計画(BCP)に直結するものが多く、医療従事者が知っておくと現場判断に役立つポイントがいくつかあります。
震後に建物の安全性を評価する「応急危険度判定」や「耐力度調査」は、多くが鉄筋コンクリート構造を前提とした評価指標を用いており、外観上のひび割れと構造的危険度が必ずしも一致しない点が意外なポイントです。
また、RC造の遮音性や気密性の高さは、感染症流行時のゾーニングや陰圧室運用には有利に働きますが、同時に「換気不良や滞留した汚染空気」が問題化しやすい環境にもなり得ます。
とくに、透析室や集中治療室など高湿度・高負荷の環境では、コンクリートの吸湿性と結露性がカビ・真菌の増殖リスクを高め、免疫抑制患者にとっての環境リスクにつながる可能性があります。
一見「堅牢で安心」に見えるRC造の病院でも、環境管理の視点から見れば、換気量・湿度管理・表面仕上げ材の選定が医療安全の重要な要因となる点は、あまり知られていない意外な情報と言えます。
鉄筋コンクリート構造の耐火性は火災時の構造安全を高めますが、実際の医療事故対応では「火災による煙と熱の挙動」「避難経路の確保」がより重要な要素になります。
RC造の階段室や避難通路は、耐火構造として設計されることが多いものの、避難中の患者搬送(ストレッチャー・車椅子)や医療機器の移動を考慮した幅員・段差計画が十分でない場合、構造上安全でも「避難上安全ではない」状況が発生し得ます。
医療従事者が鉄筋コンクリート構造の特徴を理解し、火災・地震想定の避難訓練やBCP策定に反映することで、構造的安全性と運用上の安全性を両立させることが重要です。
最後に、鉄筋コンクリート構造は長期運用に適した構造ですが、医療政策・診療報酬・地域医療構想の変化により、建物の役割自体が大きく変わることがあります。
このように、鉄筋コンクリート構造の特徴は、単なる建物の話にとどまらず、医療の継続性・安全性・柔軟性に影響するため、医療従事者が基本的な構造知識を持っておくこと自体がリスクマネジメントの一部と言えるでしょう。
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