
鉄筋コンクリート構造の本質は、コンクリートと鉄筋がそれぞれ異なる力を負担する役割分担にあります。コンクリートは圧縮力に対して非常に強い性質を持っていますが、引張強度は圧縮強度の約10分の1程度しかありません。
この弱点を補うために、引張側に鉄筋を配置することで、曲げモーメントや引張応力度を鉄筋が受け持つ仕組みになっています。具体的には以下の役割分担が行われています。
無筋コンクリートばりに曲げモーメントが作用し、断面引張側の応力度がコンクリートの引張強度を超えると、ひび割れが発生して瞬時に破壊に至ります。これを防ぐために、断面引張側に鉄筋を配し、鉄筋コンクリートばりとして抵抗させるのです。
圧縮鉄筋の量が多いほどコンクリートの負担が軽くなり、靱じん性(変形能力)が向上するという特徴もあります。これは地震時のような繰り返し応力を受ける場合に特に重要です。
医療従事者にとって理解しやすい比喩で言えば、コンクリートは「骨格」、鉄筋は「腱や靭帯」のような役割を果たしています。骨が圧縮力に強く、腱が引張力に強いという生体の構造と酷似しているのです。
鉄筋コンクリート構造の耐震性能は、鉄筋とコンクリートの組み合わせによって実現されています。地震の揺れによる力を分散させる仕組みには、以下の要素が関与しています。
参考)建築構造の1つ「鉄筋コンクリート造」とは?基本的な特徴を知ろ…
あまり知られていない事実として、鉄筋コンクリート構造の耐震性能は、コンクリートのアルカリ性環境によって鉄筋が腐食から保護されていることに依存しています。コンクリートは強アルカリ性で、鉄筋のさびを防ぐほか、かぶり(厚さ)を確保することにより、塩分や有害物質が鉄筋位置まで達することを防ぐのです。
既存建物の耐震診断では、構造耐震指標ISを用いて評価が行われます。新耐震設計基準で設計された建物については、水平耐力の評点を1.0と評価するのが一般的です。
参考)https://www.mext.go.jp/content/1403678_1-2-1.pdf
鉄筋コンクリート構造の耐火性は、コンクリートが不燃材料であることから来ています。火災に強い特徴には以下の理由があります。
鉄筋は単独では熱に弱い材料ですが、コンクリートで被覆されることで耐火性能を確保できます。この構造的特徴により、鉄筋コンクリート造は耐火建築物として認定されやすくなっています。
耐久性に関しては、鉄筋とコンクリートは劣化しにくいため、長持ちするのが特徴です。
しかし、鉄筋コンクリート構造にも劣化のリスクは存在します。コンクリート構造物の劣化と補修技術に関する資料によると、以下のような劣化因子が挙げられます。
参考)https://www.j-cma.jp/j-cma-pics/10008674.pdf
劣化が進行すると、腐食ひび割れや浮き、錆汁の発生、鉄筋の著しい断面減少、変位やたわみの発生などが見られるようになります。この段階では、耐久性能だけでなく耐荷性能も低下している状態です。
補修工法の選定には、維持管理シナリオに応じたアプローチが必要です。
最も重要なのは、劣化因子を遮断して鉄筋腐食環境を作らないための予防保全です。この段階で何らかの対策を実施するのが最も効果的です。
鉄筋コンクリート構造は多くの長所を持っていますが、経済性と施工の面では以下のような課題があります。
鉄筋コンクリート構造は自重が重いため、ある一定限度以上の階数や体育館、展示場のように柱の無い大空間を要する建築物では、構造計算上は成立しても鉄骨構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造に比較して経済効率が悪くなります。
このため、経済性を重視する際には他の構造を採用することが多いです。マンションの最下階に駐車場や店舗を持ついわゆる下駄履きマンションでない限り、経済スパンと呼ぶ5メートルから7メートル内外の範囲内に柱の配置計画を行なうことから、建物用途としてマンションで多く採用される傾向が高くなります。
設計基準強度については、普通コンクリートの場合、原則として24N/mm²以上36N/mm²以下とし、軽量コンクリートの場合は21N/mm²以上27N/mm²以下とするのが一般的です。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001396995.pdf
コンクリート及びモルタルの強度は、構造耐力上主要な部分に使用する場合にあっては一平方ミリメートルにつき18ニュートン以上としなければなりません。
参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006515.pdf
施工の課題として、鉄筋コンクリート造は現場での型枠組み、鉄筋配筋、コンクリート打設といった工程が必要であり、工期が長くなる傾向があります。また、コンクリートの養生期間も必要で、強度発現に時間がかかる点もデメリットです。
さらに、鉄筋コンクリート構造物は改修や取壊しが困難で、多額の費用を要します。これは、コンクリートが硬化すると非常に強固になるため、後からの改造が難しいからです。
鉄筋コンクリート構造の高層化には、構造的・経済的な限界が存在します。以前は高層ビルといえば鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が主流でしたが、技術の進化により、高強度コンクリートを使用した純粋な鉄筋コンクリート構造での高層ビルも増えています。
しかし、鉄筋コンクリート構造の高層化には以下の制約があります。
鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)は、鉄筋コンクリート構造(RC造)と鉄骨構造(S構造)の長所を兼ね備えていますが、その分コストは割高です。
SRC構造の特徴は以下の通りです。
あまり知られていない意外な弱点として、鉄筋コンクリート構造は「音環境」の面で課題を抱えています。コンクリートは質量が大きく、遮音性には優れていますが、室内の音が反響しやすいという特徴があります。これは、コンクリート表面が硬く、音を吸収しにくいからです。
また、鉄筋コンクリート構造は「熱環境」の面でも課題があります。コンクリートは熱を伝えにくい性質があるため、夏は暑くて冬は寒くなりやすいという特徴があります。
これは、コンクリートの熱容量が大きい(蓄熱性が高い)ため、一度温度が上がると下がりにくく、逆に温度が下がると上がりにくいという性質によるものです。
さらに、鉄筋コンクリート構造は「可変性」の面で制約があります。間仕切り壁の移動や開口部の追加が困難で、建物の用途変更がしにくいという特徴があります。これは、コンクリートが硬化すると非常に強固になり、後からの改造が難しいからです。
医療施設の設計においては、これらの弱点を考慮した設計が求められます。特に、感染対策や空調設備の配置、将来の拡張性などを考慮すると、鉄筋コンクリート構造単独ではなく、鉄骨構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造とのハイブリッド設計が検討されることもあります。