
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、鉄骨の周囲を鉄筋コンクリートで包んだ構造で、鉄骨造と鉄筋コンクリート造(RC造)の長所を併せ持つとされています。
参考)SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造 )とは?メリット・デメリ…
国税庁の耐用年数表では、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の建物について、事務所や一般用途で50年、住宅・寄宿舎・宿泊所・学校などで47年とする法定耐用年数が定められています。
参考)https://tool.yurikago.net/541/yurikago/
医療法人が所有する病院建物も、多くは「事務所用又は美術館用のもの及び下記以外のもの」もしくは「住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの」に準じて扱われ、減価償却の計算上、約47〜50年という目安で償却計画を立てるケースが一般的です。
参考)建物の寿命は何年?法定耐用年数と実際の使用年数の違いをわかり…
ここで重要なのは、法定耐用年数があくまで税務上の基準であり、技術的・物理的な「寿命」とは一致しないという点で、医療施設の実際の更新タイミングは法定耐用年数を超えても適切な維持管理により運用される事例も少なくありません。
参考)https://www.bcj.or.jp/kison/taiyounensu/
例えば、SRC造・RC造のマンションや事務所では47〜50年という法定耐用年数に対し、適切な大規模修繕を行うことで60〜80年程度利用されている建物も報告されており、医療施設でも同様に長期使用を前提とした設計・管理が現実的な選択肢となっています。
参考)RC造(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数とは?物件用途によ…
このため、医療従事者が建物更新を検討する際には、「帳簿上の償却が終わるタイミング」と「医療安全・機能面から見た更新タイミング」を切り分けて議論することが求められます。
参考)鉄筋コンクリート造の耐用年数は何年?注意点や過ぎたらどうなる…
参考:法定耐用年数とSRC造の基礎解説
ORIX「SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造 )とは?」
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、RC造や純鉄骨造と比較して法定耐用年数が同等かやや長い水準で設定されており、事務所や非住宅用建物ではRC造・SRC造ともに50年程度とされています。
医療施設の視点で見ると、SRC造やRC造は耐震性・耐火性・遮音性に優れ、検査機器や手術室など重量物を設置する用途にも適しているため、大型病院や基幹病院で採用されることが多い構造です。
また、SRC造では鉄骨と鉄筋コンクリートが一体化することで、地震時のしなやかさと変形の抑制が両立されるとされ、災害拠点病院などで求められる継続利用性(レジリエンス)の観点からも有利とされます。
法定耐用年数と実際の使用年数のギャップとして、RC造・SRC造の建物が70年近く利用される事例や、適切な改修により100年超を目指す長寿命化計画が策定されている自治体もあり、耐震改修や設備更新を組み合わせることで「躯体は生かしながら機能を更新する」という発想が広がっています。
参考)https://www.pref.chiba.lg.jp/shisan/choujumyouka/documents/kaiseichoujyumyoukasekkeikijyun.pdf
医療施設では、躯体の寿命よりも医療機器・設備・情報システムの陳腐化が先行するため、「構造体の耐用年数」と「医療機能の更新周期」を別々に設計することが、コストと医療安全の両面で重要です。
参考:法定耐用年数と実際の建物寿命の違い
Re:build「建物の寿命は何年?法定耐用年数と実際の使用年数の違い」
鉄骨鉄筋コンクリート造の実際の耐用年数を評価する上で鍵になるのが、コンクリートの「中性化」と鉄筋・鉄骨の腐食です。一般財団法人日本建築センター(BCJ)では、コンクリートコアの中性化試験などに基づき、鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の構造体耐用年数を評価する仕組みを運用しています。
参考)https://www.bcj.or.jp/upload/kison/taiyounensu/kison07_taiyounensu_211129.pdf
中性化とは、コンクリート内部のアルカリ性が徐々に失われ、鉄筋を保護する性能が低下する現象で、中性化が鉄筋まで進行すると、鉄筋腐食が起こりやすくなり、ひび割れや剥離などの劣化につながります。
BCJの評価では、構造体の最外側鉄筋のほとんどに中性化が到達しない期間を耐用年数として評価し、「現況評価」と「改修計画評価」に分けて報告することが特徴です。
現況評価では、現在の劣化状況と将来予測に基づき、「通常の修繕を前提とした場合にあと何年使用可能か」を示し、改修計画評価では、追加の補修・表面被覆・防水改修などを前提とした場合に、どの程度耐用年数を延長できるかを評価対象とします。
医療施設においても、外壁のタイル剥落やひび割れ、鉄骨露出などの目視劣化だけでなく、コア採取による中性化深さの測定や、鉄筋腐食の有無を確認することが、長寿命化計画の基礎データとして重要です。
特に、薬品・消毒液・高湿度環境を抱えるエリア(中央材料室、洗浄室、透析室など)や、屋上ヘリポート・屋上設備周りでは、水分や塩分の影響で局所的な劣化が進みやすく、一般の事務所ビルとは異なる診断視点が求められます。
参考:中性化進行に基づく耐用年数評価の解説
日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」
自治体では、県有建物や公立病院の長寿命化を図るため、「長寿命化設計基準」や「長寿命化計画」を策定し、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造建物の改修タイミングや標準的な改修内容をガイドラインとして示しています。
千葉県の県有建物長寿命化計画に係る設計基準では、躯体の余寿命評価、中性化・ひび割れ・鉄筋腐食の診断方法、耐震性の確認方法などが整理されており、病院・学校などの公共施設を60〜80年程度使用することを想定したステップ改修が提案されています。
ここで意外に有用なのが、民間医療法人であっても、こうした自治体の長寿命化基準を「無料のリファレンス」として参照できる点です。
たとえば、外壁改修の推奨周期(例:15〜20年ごと)、防水更新の目安(例:10〜15年ごと)、耐震診断・補強のトリガー(築年数や設計年度をベースにしたチェック)などは、民間病院にもそのまま適用しやすく、長期修繕計画の作成時に役立ちます。
また、これらの長寿命化設計基準では、ライフサイクルコスト(LCC)の観点から、「建替え」と「改修」の費用比較が例示されていることが多く、SRC造病院を建替えるか大規模改修で延命するかを検討する際の参考資料として利用できます。
医療従事者としては、建物更新議論の場で「自治体が採用している長寿命化基準では、○○年まで延命が前提になっている」という根拠を示すことで、単純な築年数のみで建替えかどうかを判断する風潮に対して、より合理的な視点を提供できます。
参考:公共施設長寿命化設計基準(病院にも応用可能)
千葉県「県有建物長寿命化計画に係る 長寿命化設計基準」
医療施設で鉄骨鉄筋コンクリート造の耐用年数を考える際に、他業種と大きく異なるのが「設備の更新頻度」と「感染対策」「BCP(事業継続計画)」との整合です。
躯体の耐用年数が50年程度とされる一方で、医療機器や空調・給排水・情報インフラは10〜20年程度の更新周期であり、特に陰圧室・クリーンルーム・手術部の空調システムは感染対策や法令改正に応じた短い周期での更新が求められます。
このため、鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体を長期に活かすには、「設備更新を繰り返しても躯体に過度な負荷をかけない」計画が重要になります。具体的には、
・設備シャフトやメンテナンス用スペースを余裕をもって確保する
・将来の配管・ダクト経路を見越したスリーブ計画を行う
・設備機械室の床耐荷重を将来の大型機器に対応できるよう設定する
など、初期設計時から長寿命化を見据えた構造・設備の協調設計が求められます。
さらに、BCPの観点からは、災害時にも機能を維持するための耐震性・配電系統の二重化・非常用発電設備の容量確保などが重要であり、これらの更新が躯体に与える影響も考慮する必要があります。
例えば、非常用発電機や酸素タンクなど重量物の入替時には、SRC造の耐荷重性能を超えない範囲で更新することが前提となり、場合によっては梁・床スラブの補強や新設が必要になることもあり得ます。
このように、医療現場では「耐用年数=何年で建替え」という単純な図式ではなく、「躯体」「設備」「医療機能」の三層をそれぞれの更新周期でマネジメントすることが、鉄骨鉄筋コンクリート造のポテンシャルを最大限に活かす鍵となります。
医療従事者としては、建物更新や大規模改修の議論の場で、患者動線・感染対策・災害時運用といった臨床側の視点を積極的に持ち込み、耐用年数の議論を単なる「年数消化」ではなく「医療の質と安全を支えるインフラの最適化」として位置づけていくことが重要ではないでしょうか。
あなたの勤務先の医療施設では、鉄骨鉄筋コンクリート造の耐用年数と設備更新・医療機能の更新を、どのように連動させて議論していきたいですか?
【第3類医薬品】チョコラBBプラス 180錠