あなたが署名済みの事前指示書、実は無視されることがあります。

終末期医療とは、回復が見込めない病気や老衰によって余命が限られた患者に対し、延命目的の治療を控えて苦痛を取り除きながらQOL(生活の質)を維持することを目指す医療です。ターミナルケアという呼び方もされますが、内容はほぼ同じ意味で使われています。
参考)終末期(ターミナルケア)とは|定義や期間・内容・家族ができる…
つまり延命ではなく、残された時間の質を高めることが目的ということですね。
具体的には、痛みのコントロールや精神的サポート、家族への配慮などが含まれます。がんの終末期であれば緩和ケア病棟、老衰であれば在宅や介護施設など、状況に応じて場所も変わります。厚生労働省もガイドラインを公表しており、患者本人の意思決定を基本原則としています。
参考)終末期医療はどこで受けるべき?病院・介護施設・在宅ケアの違い…
ただしこのガイドラインには法的拘束力がありません。ここは意外ですね。医療従事者が現場で最終判断を求められる場面は、想像以上に多いのが実情です。
終末期医療と緩和ケアは似ていますが、対象範囲が異なります。緩和ケアはがん診断直後から始められる場合もあり、終末期に限定されません。一方、延命治療は人工呼吸器や経管栄養など、生命維持そのものを目的とした処置を指します。
参考)終末期医療とは? 問題点や支援内容・医師の関わり方を紹介
延命治療を中止することが終末期医療、と誤解されがちですが、正確には「中止」ではなく「差し控え」や「緩和優先への切り替え」という位置づけになります。この違いを理解していないと、患者家族への説明時に誤解を招くことがあります。
説明が食い違うと、家族からのクレームにつながるケースもあります。ここでのリスクは医療従事者側にとって決して小さくありません。説明時には日本医師会や厚労省の資料を根拠として示すと、家族の理解を得やすくなります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1224-14f.pdf
終末期医療への切り替えタイミングに、明確な数値基準はありません。多くの現場では「余命数週間から半年程度」が目安とされますが、これは病態によって大きく変動します。
参考)終末期医療(ターミナルケア)とは?判断基準と患者を支えるケア…
たとえばがん末期では急激に状態が悪化することが多く、老衰では数ヶ月単位で緩やかに進行するのが一般的です。イメージとしては、がんは急な下り坂、老衰は長い下り坂と考えるとわかりやすいでしょう。
判断が難しい場合は多職種でのカンファレンスが有効です。医師単独の判断では家族との認識ズレが生じやすいためです。
多職種連携が基本です。看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど複数の視点を入れることで、後々のトラブルを避けやすくなります。
終末期医療は病院だけでなく、在宅や介護施設でも実施可能です。在宅の場合は訪問診療や訪問看護の体制が整っているかが重要な確認ポイントになります。
在宅での終末期医療は、24時間対応可能な訪問診療医と連携できているかが条件です。この条件を満たせない場合、緊急時に対応が遅れるリスクがあります。夜間の急変時に主治医と連絡が取れない、という事態は避けたいところです。
本人が延命治療を望まないと明記していても、家族が延命を希望すれば医療従事者はその意向を無視できない、という構造的な問題があります。これは制度上の限界と言えます。
痛いところですね。本人の自己決定権を尊重する制度であるはずなのに、実務では家族の同意が事実上の最終判断になっているのが現実です。
この問題を避けるためには、事前指示書だけでなく、家族を含めた事前ケア計画(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の話し合いを繰り返すことが重要です。話し合いの記録を残すサービスやツールを活用すると、後の意見対立を減らしやすくなります。ACPの記録を院内で共有できる仕組みを整えているか、一度確認してみてください。