あなたの減薬提案、退院後に1件で崩れます。
参考)ポリファーマシーとは?原因・問題点・対策・薬剤師ができること…

ポリファーマシーは、単に薬の数が多い状態ではありません。厚生労働省は、薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態と整理しています。つまり剤数だけを見て「多いから減らす」と判断すると、実務では外しやすいということですね。
参考)https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20240415-1-1.pdf
日本病院薬剤師会も同様に、ポリファーマシー対策は減薬そのものではなく、追加・変更・中止を含めた薬物療法の適正化だと示しています。ここが大事です。必要な薬が入っていない過少処方まで含めて考えるため、薬剤師の評価軸は「何剤か」より「害が利益を上回っていないか」に移ります。
実際、日病薬の資料では75歳以上の約25%が7種類以上、約40%が5種類以上の薬剤を処方されているとされます。高齢患者では複数疾患と複数診療科受診が重なりやすく、数だけで異常扱いできません。結論は状態評価です。
この視点を持つと、現場の確認項目も変わります。重複投与、相互作用、PIMs、服用回数、剤形、残薬、本人の理解度、介護者の支援力まで含めて見ることが、薬剤師の介入価値を一気に高めます。つまり全体最適です。
対象患者の抽出を感覚で行うと、忙しい外来や病棟では続きません。厚生労働省は、薬剤起因性老年症候群が疑われる患者、PIMsを含む処方、転倒リスクがある患者などを抽出条件の例として示しています。抽出基準が基本です。
さらに地域版の手引きでは、薬局の電子薬歴システムに検出機能を入れる、保険者がレセプト分析で候補者を出す、診療所が電子カルテをカスタマイズして年齢・処方薬数・薬剤種類などで自動抽出する方法が紹介されています。人手だけで探すより、最初から仕組みに乗せたほうが時間損失を減らせます。これは使えそうです。
病院では、6種類以上の内服薬が処方されている入院患者に対して総合的評価と処方見直しを促す算定要件が示されています。ただし、ここでも6剤以上は入口にすぎず、減薬が必須ではありません。6剤だけ覚えておけばOKです。ではない点に注意が必要です。
現場で有効なのは、抽出条件を1つに絞りすぎないことです。たとえば「7剤以上」だけでなく、「睡眠薬が2剤以上」「転倒歴あり」「腎機能低下」「退院予定1週間以内」など、行動につながる条件へ分解すると、薬剤師の提案が具体的になります。つまり組み合わせです。
対象抽出の場面で軽く使いやすい追加知識として、国立長寿医療研究センターのお薬問診票があります。受診時の見落とし対策という場面で、患者の服薬状況を拾うことが狙いなら、その問診票を1回確認するだけで十分です。
お薬問診票の参考先です。受診時にポリファーマシーが疑われる患者を拾う視点がまとまっています。
国立長寿医療研究センター お薬問診票
薬剤師の提案が通るかどうかは、知識量より連携の設計で決まります。厚生労働省は、地域でのポリファーマシー対策では患者と直接接する医療従事者が、自ら対応可能なところから始める意識が重要だとしています。小さく始めるのが原則です。
たとえば、診療所と近隣薬局だけで始める形でも十分です。既存の診療情報提供書、看護サマリー、お薬手帳、電子処方箋、トレーシングレポートに「処方見直し内容」「理由」「患者の意向」を足すだけで、ゼロから新様式を作らずに動かせます。つまり追記運用です。
他科処方の見直し提案では、理由が弱いと止まります。厚生労働省は、他科の処方薬を見直す際の確認事項として、見直しの明確な理由、手順、起こりうる問題、問題発生後の対応策とフォロー体制を示しています。どういうことでしょうか? 要は「減らしたい」ではなく、「この薬をこの順番でこう減らし、こう崩れたらこう戻す」と書く必要があるということです。
日病薬の手順書例でも、医師・薬剤師・看護師などが日常的な情報共有の機会を活用し、処方内容の見直し後も再評価する流れが明示されています。カンファレンスを新設しなくても、朝会や病棟ミーティングの5分を使うだけで運用は始められます。結論は日常業務への埋め込みです。
この連携設計のメリットは大きいです。薬剤師が単発で電話照会するより、同じ患者の背景、減薬意向、副作用歴が見えるため、処方変更の合意形成が速くなります。1件5分の確認差でも、月20件なら100分ほど浮く計算で、現場感としてはかなり大きいですね。
見直した処方が退院後に戻る。ここが一番痛いところです。日病薬は、退院時にお薬手帳や薬剤管理サマリーへ、追加・変更・中止の理由や経過を記載し、転院先や薬局、介護保険施設へ提供することを強く勧めています。退院後連携が条件です。
資料の記載事例では、転倒後の患者でエチゾラム中止、睡眠薬変更、降圧薬減量、ビタミン剤中止、腎機能に応じたファモチジン減量など、変更理由が具体的に残されています。こうした理由が残っていれば、次の医療者は「なぜ外したか」を理解でき、安易な再開を防ぎやすくなります。理由の見える化が基本です。
さらに日病薬は、サマリーへの返書を活用すると、フォローアップ体制や相互の関係性を構築できると示しています。返書まで回ると、病院薬剤師は退院後の維持状況を把握でき、薬局薬剤師は病院での処方変更意図を理解したうえで継続支援できます。ここで介入が線になります。
実務では、全患者に詳細サマリーを書くのは重いです。そこで日病薬が示すように、患者年齢、疾患、処方薬、退院先などで発行優先条件を決めておくと、作成の負担を抑えながら効果の高い症例へ集中できます。つまり優先順位です。
病棟や薬局で文書作成の手間がボトルネックになる場面では、既存の電子カルテや薬歴から基本情報や検査値、処方データを反映させる運用が狙いになります。その候補として薬剤管理サマリーの様式を1回見直すだけで、記載漏れや属人化を減らせます。
薬剤管理サマリーの参考先です。退院後につなぐ書き方と返書の考え方が具体例つきで確認できます。
日本病院薬剤師会 ポリファーマシー対策の進め方
検索上位の記事では、減薬提案や患者説明が中心になりがちです。ですが、実は一番見落としやすいのは「ポリファーマシー対策をした証拠をどう残すか」です。記録が弱いと再現できません。
厚生労働省は、成果のモニタリング指標として、対象患者数、処方薬剤数、服用回数、見直し理由、診療報酬の算定状況、薬剤費、活動回数、理解度、退院後の維持状況まで挙げています。ここまで見ると、対策は“いいことをした”で終わらせず、数で追う業務だとわかります。つまり監査可能性です。
たとえば月1回、薬局や病棟で「処方変更件数」「再開件数」「転倒・せん妄関連の介入件数」「サマリー発行率」だけでも記録すれば、次の改善点が見えます。あなたが上司や医師へ説明するときも、感想ではなく実績で話せます。これは強いです。
もう一つ重要なのは、患者教育の入口です。厚生労働省は、お薬手帳を1冊にまとめること、体調変化やOTCも記載すること、受診時チェックリストに手帳確認を入れることを具体策として示しています。患者が薬を持ってこない。そこから全部崩れます。
そのため、服薬情報の一元管理が弱い場面では、まず患者にマイナ保険証やお薬手帳の持参を促し、来局時チェック項目へ入れることが狙いになります。候補はそれだけです。派手ではありませんが、ここを整えるだけで処方全体が見え、重複や再開の見逃しをかなり減らせます。
ポリファーマシー啓発の患者向け資料です。お薬手帳や服用薬の整理を、患者説明にそのまま使いやすい内容です。
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