あなたの薬局、シェアだけで選ぶと入力残業が増えます。

電子薬歴システムのテーマで最初に押さえたいのは、電子カルテのような「メーカー別シェア順位」が公的に一覧化されていないことです。公開情報では、矢野経済研究所が2024年度のクリニック・薬局向け医療ICT国内市場規模を前年度比5.5%増の644億4,300万円と予測していますが、ここには電子薬歴以外の領域も含まれます。
参考)2025年版 医療ICT市場の現状と展望 ~クリニック・薬局…
つまり、検索で見える「シェア」は、厳密な販売台数順位というより、導入事例数、知名度、比較記事での掲載頻度、薬局現場での存在感を合わせて読む必要があるということです。ここが出発点です。
そのため実務では、メーカー別の公開シェアが薄い分、薬局全体の電子化率、電子処方箋対応率、比較メディアで繰り返し登場する製品群から市場の重心を見ます。電子薬歴の普及率については、厚生労働省調査を引用した解説で2019年時点の薬歴管理電子化が73.9%とされています。
参考)電子薬歴メーカー比較3選【31社掲載】│調剤薬局向け導入ガイ…
この73.9%は古く見えても重要です。紙薬歴が主流だった時代から、すでに「電子化している薬局が多数派」に移っていたことを示す数字だからです。結論は電子化前提です。
比較記事や製品紹介で頻出するのは、ウィーメックスのPharnesX-MX、株式会社カケハシのMusubi、EMシステムズ系のMAPS for PHARMACY DX、メドレーのMEDIXS、ソラミチシステムのCARADA 電子薬歴 Solamichi、シグマソリューションズのエリシアSあたりです。
参考)電子薬歴システムの市場規模とメーカーシェア 2019年
この顔ぶれを見ると、市場は大きく2系統に分かれます。ひとつはレセコン一体型やハイブリッド型を含む大手基幹系、もうひとつはクラウドを軸に在宅、多店舗共有、服薬指導効率化を伸ばしている運用改善系です。役割分担が見えます。
たとえばPharnesX-MXは重複投薬やOTC相互作用チェックを標準搭載したオンプレ対応の特化型として紹介され、Musubiは薬歴電子化だけでなく在宅業務や服薬指導コンテンツまで含む薬局DX支援として位置づけられています。MEDIXSは20,000点以上の指導文例、Solamichiは端末追加費用が発生しにくい運用、MAPS for PHARMACY DXは月額20,000円/台からという価格の出し方が特徴です。
ここで大事なのは、上位によく出る製品が必ずしも同じ土俵で競っていない点です。入力速度を売りにする製品と、経営分析や在宅報告書まで含めて評価される製品では、比較軸そのものが違います。そこが盲点です。
薬局現場では、電子薬歴単体のシェアより、周辺制度の普及が導入判断を強く動かします。特に大きいのが電子処方箋で、厚生労働省資料では2025年2月23日時点で運用開始済み施設は全国52,854施設、全体24.9%、このうち薬局は41,030施設で67.9%でした。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001428602.pdf
この67.9%はかなり大きい数字です。病院5.2%、医科診療所12.1%、歯科診療所2.2%に対して、薬局だけが先行している構図が見えます。
つまり、読者が「まだ様子見でもいい」と考えているなら、その常識は少し古いです。電子処方箋側の普及が進むほど、薬歴側の連携力が弱いシステムは時間ロスを生みやすくなります。連携が条件です。
参考: 電子処方箋の全国導入状況を確認できる厚生労働省資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001428602.pdf
1つ目は、シェアが高そうだから安全だと考える見方です。実際には、入力省力化、監査、在宅、多店舗共有、画像保存、報告書作成まで業務の重みづけが薬局ごとに違うため、同じ人気製品でも合う・合わないが分かれます。
2つ目は、価格だけで判断することです。たとえば公開価格が見える製品では、MAPS for PHARMACY DXが月額20,000円/台から、Pharmyがソフト料金83万円の買い切りといった違いがありますが、端末数、サポート、オプション、移行作業まで入れると単純比較はできません。
3つ目は、薬歴入力の速さだけを見ることです。監査機能が弱ければ、あとで疑義照会や確認作業が増え、10cmの付箋を何枚も貼るような手戻りが発生します。痛いですね。
4つ目は、在宅や多店舗共有を後回しにすることです。クラウド型は訪問先や別店舗からの参照・入力に強く、オンプレや一体型でも共有オプションの設計差があります。多店舗や在宅が少しでも増える薬局なら、ここを後回しにすると数カ月後に再検討が始まりがちです。
5つ目は、電子処方箋との接続を「将来の話」と考えることです。薬局側ではすでに普及が進んでいるため、現時点の業務設計で見ておいた方が安全です。結論は連携優先です。
独自視点としておすすめしたいのは、「メーカーシェア」ではなく「1日あたり何分削れるか」という時間シェアで見ることです。薬局の利益は、導入時の見栄えより、毎日の入力、監査、服薬指導、在宅報告の総時間に強く左右されるからです。
たとえば1人の薬剤師が1件あたり2分短縮できて、1日40件なら80分です。はがきの横幅くらいの短い差に見えても、月20日で1,600分、約26時間になります。意外ですね。
この見方をすると、シェア上位かどうかより、薬歴表紙・監査情報・過去薬歴が一画面で見えるか、指導文例が豊富か、処方比較が色分けされるか、GS1コード監査や画像保存があるかが効いてきます。
調剤過誤や監査抜けのリスクを減らしたい場面では、狙いは確認漏れの削減です。その候補としては、相互作用チェック、処方比較表示、画像保存、GS1監査に対応する製品を1回のデモで見比べる行動が有効です。これだけ覚えておけばOKです。
メーカー別シェアが不透明な市場ほど、現場では「何ができるか」が勝ちます。数字で勝つのは販売シェアですが、運用で勝つのは業務時間の削減幅です。つまり運用差です。
参考: 電子薬歴の機能、タイプ、比較ポイントを整理しやすい比較記事
参考: 電子薬歴の普及率、3条件、導入時の考え方を確認できる解説
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/emh
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