夜間工事を発注する側、受注する側のどちらにとっても、単価が何倍になるのかという疑問は避けられません。特に公共工事の場合は、国土交通省や各都道府県の積算基準に基づいて厳密に計算されるため、適正な見積もりが求められます。本記事では、夜間工事の単価が何倍になるのか、その計算方法や根拠を詳しく解説します。

夜間工事の単価は、時間帯によって異なる割増率が適用されます。国土交通省の積算基準によると、20 時~6 時の時間帯で作業を行う場合は、基準となる労務単価に 1.5 を乗じた単価が適用されます。 これは、日中の通常勤務時間帯(8 時~17 時)を外して作業を行うことによる、夜間補正です。
参考)土木工事の積算(国交省ほか積算基準)において、夜間工事(20…
さらに、22 時~5 時の深夜時間帯については、深夜割増が加算されます。この時間帯は基準額の 1.5 倍という夜間補正に加え、深夜割増として 0.25 倍の加算も行われ、合計で約 1.75 倍の単価になる場合があります。
参考)https://zouplans.net/archives/2259
また、通常勤務すべき時間帯を超えて作業を行う時間外労働については、1.25 倍の割増が適用されます。休日労働の場合は 1.35 倍、休日の深夜時間帯については 1.60 倍の割増率となります。
参考)https://www.city.saitama.lg.jp/005/003/022/004/p006287_d/fil/warimasitinngin.pdf
以下の表に、主な時間帯と割増率をまとめます。
| 時間帯 | 割増率 | 備考 |
|---|---|---|
| 20 時~6 時(夜間) | 1.5 倍 | 夜間補正 |
| 22 時~5 時(深夜) | 1.5 倍+0.25 倍 | 夜間補正+深夜割増 |
| 8 時~17 時超(時間外) | 1.25 倍 | 時間外割増 |
| 休日(8 時間労働) | 1.35 倍 | 休日割増 |
| 休日深夜(22 時~5 時) | 1.60 倍 | 休日+深夜割増 |
このように、単純に「夜間=1.25 倍」と考えてしまうと、実際の人件費と見積もり額に乖離が生じ、赤字の原因となります。
夜間工事の労務費を正確に計算するためには、以下の式を用います。
労務費(総額)=単価+単価×K×割増すべき時間数
ここで、K は「1 時間当り割増賃金係数」と呼ばれ、職種によって異なります。K の値は、割増対象賃金比を 8 で割り、さらに割増係数(1.25、1.35、0.25)を乗じて算出します。
例えば、時間外労働 4 時間に加え、そのうち 2 時間が深夜時間帯に該当する場合の計算は以下のようになります。
労務費(総額)=単価+単価×K(1.25 の場合)×4 時間+単価×K(0.25 の場合)×2 時間
また、冬期間に夜間工事を行う場合は、さらに冬期補正係数を乗じた加算額を足し合わせる必要があります。
冬期間夜間工事単価=(日中単価×夜間割増係数×週休 2 日補正係数)+(日中単価×冬期割増率×週休 2 日補正係数)
参考)https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/255972.pdf
このように、時間帯や季節、休日などの条件を正確に把握し、それぞれに対応した係数を適用することが重要です。
夜間工事の単価について、意外な事実として、2 交替・3 交替による 24 時間連続施工の場合は、夜間時間帯に対しても 1.5 倍の夜間補正を行わないというルールがあります。 これは、2 交替・3 交替制の場合、所定労働時間内(実働 8 時間+休息 1 時間)で作業を行うため、夜間手当の代わりに所定労働時間内の深夜割増(0.25 倍)のみを加算するためです。
この仕組みは、通常勤務時間帯を外して作業する場合の負担を補うための夜間補正(1.5 倍)と、交代制勤務で所定労働時間内に作業を行う場合の深夜割増(0.25 倍)を区別したものです。
したがって、工程計画が交代制勤務による連続施工になるのか、単発の夜間作業になるのかによって、単価が大きく異なる点に注意が必要です。
夜間工事の単価見積もりを誤ると、深刻な赤字に陥る可能性があります。実際の事例として、あるビル改修工事では、当初「夜間作業 3 割・日中 7 割」という前提で、夜間単価を一律 1.25 倍として積算しました。しかし、テナントの都合で制約が増え、実際には夜間 6 割・深夜を含む休日作業 2 割に膨れ上がりました。
参考)https://sasaki-denkou.com/blog/80393
この結果、帳簿上は黒字でも、実際の支給賃金と労務単価を突き合わせると、1 人工あたり数千円の赤字が積み上がる形になりました。これは、見積もりの時点で「夜間は 1.25 倍で一律」としてしまい、残業・深夜・休日深夜の複合割増を見込んでいなかったことが致命傷でした。
特に、商業施設やマンションの改修工事では、日中の騒音規制や営業時間との兼ね合いで、夜間作業の比率が当初計画より高まるケースが頻発します。発注者と工程段階で日中と夜間の比率を具体的にすり合わせ、見積もりの時点で現実的な割合を織り込むことが、赤字を防ぐ近道です。
電気工事の夜間工事比率を確認し適正な割増率をプロ目線で解説 - 電気工事専門ブログ
このリンクには、夜間工事比率を確認するためのチェックシートや、適正な割増率を設定するための実務的なノウハウが記載されています。
夜間工事の単価見積もりにおいて、多くの企業が見過ごしている点が「夜間工事率の適正評価」です。単に「夜間=1.25 倍」「深夜=1.5 倍」という係数を適用するだけでなく、現場の特性や工程のリスクを考慮した見積もりが必要です。
例えば、以下のような要因を考慮することで、より適正な見積もりが可能になります。
これらのリスクをあらかじめ見積もりに反映させるためには、過去の類似現場のデータを蓄積し、夜間比率の標準値や変動幅を把握しておくことが有効です。また、発注者との交渉力を高めるために、夜間比率の根拠となる資料や実績データを準備しておくことも重要です。
公共建築工事積算基準等資料 - 国土交通省
この資料には、夜間工事の積算基準や計算方法の詳細が記載されており、適正な見積もりを行うための根拠として活用できます。
なお、夜間工事の単価が何倍になるのかという疑問に対しては、一概に「1.25 倍」や「1.5 倍」と答えることはできません。時間帯や休日・深夜の条件、交替制勤務の有無など、複数の要素を正確に把握し、適切な係数を適用して計算することが、適正な見積もりにつながります。
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