
弁護士が「利益相反」を理由に相談や事件受任を断るのは、本人の気分や忙しさではなく、弁護士法や弁護士職務基本規程で禁止されている行為を避けるための義務です。
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利益相反とは、簡単にいえば「利害が対立する当事者の双方に弁護士が関わること」であり、医療訴訟や医療事故相談でも、患者側と医療機関側の両方に関与することは原則認められません。
参考)弁護士とのマッチング
例えばある医師が、以前勤務していた病院で起きた医療事故について訴訟を検討し相談に行ったところ、その病院側から過去に顧問や訴訟代理人として依頼を受けていた弁護士だった、というケースでは、弁護士は病院の「味方」であるため医師側の相談は受けられません。
参考)利益相反の確認について(ご相談をご検討の皆様へ) - 弁護士…
医療従事者の感覚では「患者か病院かどちらかの側に立つだけ」というシンプルな構図に思えますが、法律実務では「過去の相談」「同一グループ病院」「関連会社」「保険会社」など、多層の利害関係が利益相反の判断に影響するため、当事者からは見えないラインで「断り」が発生することがあります。
参考)利益相反の取扱い
ここで誤解しやすいのは、「利益相反だから断る」と言われないまま、あるいは「具体的な理由は申し上げられません」とだけ伝えられるため、「適当に断られた」「医療者だから冷たく扱われた」と感じてしまう点です。
しかし弁護士には、既に相談・依頼を受けている相手方の存在自体や相談内容を第三者に漏らしてはならない「守秘義務」があるため、「あなたの病院の〇〇部長から先に相談を受けているので利益相反です」とはっきり説明すること自体が守秘義務違反になり得ます。
このため、医療従事者側は「理由を明かせない断り」がシステム上存在していることを前提にしつつ、自身の側で整理・準備しておくことで、次の弁護士とのマッチングをスムーズに進める工夫が欠かせません。
参考)弁護士法で受任できない案件がある? 利益相反とは
感情的には納得しがたい場面でも、「弁護士の断り方=信頼の担保プロセス」と捉え直すことが、今後の紛争対応を冷静に進めるうえで重要です。
多くの法律事務所では、相談予約の段階で「相手方の氏名」「勤務先」「関係者の名前」などを確認する「利益相反チェック(コンフリクトチェック)」を行っており、これに協力できない場合は相談自体を受けられないことがあります。
これは、弁護士法25条と弁護士職務基本規程27条・28条で、依頼者と利害が対立する相手方の事件を同時に扱うことが禁止されているためであり、医療機関におけるダブルブッキング防止や診療情報のアクセス制御と同じく「システム上の安全装置」と考えられます。
医療従事者が相談を申し込む際、相手方病院・診療所の正式名称、医療法人名、場合によっては関係会社や保険会社名まで正確に伝えることは、コンフリクトチェックの精度を高めるうえで重要です。
とくに大規模医療法人グループやチェーンクリニックでは、一見別法人に見えても法的には同一グループ扱いとなり、弁護士側のデータベースでは「同一または類似当事者」として処理されているため、こちらからもできるだけ詳細な情報を出しておく方が、後からの「突然の辞任」を防ぎやすくなります。
意外な点として、ある法律事務所が「医療機関の顧問」となっている場合、医療従事者個人からの相談でも、病院との利害対立が予見されると判断されれば利益相反とされることがあります。
これは、顧問契約が単に「相談しやすい窓口」ではなく、日常的に病院側の利益を守る役割を担っているためであり、医療従事者の立場からすると「同じ医療者として味方してくれそう」と感じる弁護士が、法的には「病院側の代理人」として制約を受ける点は、知っておきたい落とし穴です。
なお、利益相反チェックは相談前だけでなく、事件進行中にも継続的に行われており、新たな関係者や証拠が出てきた段階で後から利益相反が判明することもあります。
その場合、弁護士は依頼者の不満を承知のうえで、職務の公正と信頼の観点から「途中で辞任する」という、医療現場でいえば主治医交代に近い対応を取らざるを得ないことがあるため、「最初にどこまで情報を共有しておくか」が依頼者側のリスクマネジメントとしても重要なのです。
医療従事者が弁護士に相談しようとした際、「利益相反の可能性があるためお受けできません」とだけ告げられるケースでは、まずその場で感情的な反応を抑え、「別の弁護士を紹介していただけますか」と一言添えることが実務的には有効です。
利益相反を理由に自分で受任できない弁護士でも、同一事務所内で利益相反に抵触しない別の弁護士、または別事務所の弁護士を紹介できる場合があり、紹介状や経緯の説明があることで、次の相談がスムーズになることがあります。
相談前には、医療記録や院内報告書に加え、「自分の立場」「相手方」「関係者」「これまでのやり取り」をA4一枚程度で整理したメモを用意しておくと、弁護士が短時間で利益相反の有無を判断しやすくなります。
参考)https://laboz.jp/nursing-blog-guide-seo-writing-techniqu/
とくに、医療者側の背景として「勤務医か開業医か」「院内でどのポジションか」「院内委員会やリスクマネジメント部門との関係」などを明示しておくと、弁護士は依頼者の求めるゴール(身を守るのが主目的か、改善提案か、訴訟か)を早期に把握しやすく、利益相反のリスクを回避しつつ、最適な受任・非受任の判断を行いやすくなります。
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また、弁護士に断られた経験を院内でどのように共有するかも重要なポイントです。
個人情報や守秘義務に配慮しつつ、「どのような理由で法律相談が進まなかったのか」「相談前の情報提供にどんな工夫が必要だったのか」を院内のリスクマネジメント会議や医療安全委員会で共有することで、組織としての法務対応力を高めることができます。
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意外と見落とされがちなのが、「相談先の地域バランス」です。
特定の地域で医療訴訟や医療事故相談が集中している事務所ほど、同一医療圏内の多くの病院や医師と既に関係を持っていることが多く、相談できる側・できない側が地域的な偏りを持ちやすくなるため、医療従事者側で「県外」「オンライン相談」「専門弁護士グループ」など、少し広い視野で相談先候補をリストアップしておくことも、利益相反による行き詰まりを避ける戦略として有用です。
医療従事者にとって「利益相反」という言葉は、弁護士だけでなく、製薬企業や医療機器メーカーとの関係、臨床研究・治験、学会発表の利益相反自己申告など、日常的に意識すべき概念として既に馴染みがあります。
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興味深いのは、医療倫理における利益相反と、弁護士実務における利益相反が重なり合う「二重の利益相反」が起こり得ることです。
例えば、ある医師が製薬企業から講演料や研究費を受け取っている一方で、同じ企業の薬剤が関わる薬害訴訟や不具合訴訟に患者側代理人として関わる弁護士に相談した場合、医師自身も「利益相反の自己申告」を求められる可能性があります。
このとき、弁護士側でも、その製薬企業や関連団体の顧問・代理人として過去に関与していれば利益相反に該当し、双方の利益相反が絡み合う複雑な構造が生まれるため、相談の初期段階で「企業との関係」「研究資金の出どころ」「関連学会での役職」などを丁寧に整理しておくことが重要になります。
また、医療機関内部での倫理審査委員会(IRB)や研究倫理審査の場で、委員が自身の利益相反を申告して審議から外れる仕組みは、弁護士の利益相反回避の仕組みと構造的によく似ています。
医療従事者が自らの倫理ガバナンスの経験を振り返りながら弁護士の「断り方」を見直すことで、「なぜここまで慎重なのか」という疑問が、同じプロフェッショナルとしての共通言語に変わりやすくなります。
さらに、医療者が学会発表や論文投稿で利益相反を自己開示する文化は、患者や社会との信頼関係を維持するための重要な手段ですが、弁護士側も同様に、依頼者との関係性や過去の関与を慎重に管理することで「法的プロフェッションとしての信頼」を守っています。
この「相互のプロフェッションとしての信頼維持」という視点に立つと、弁護士の断り方も、「医療者としての自分が患者に対して行う説明責任」と並行して理解しやすくなり、対立ではなく協働の起点として捉え直すことができるでしょう。
医療現場で法的トラブルが起きた際、「最初に相談した弁護士に断られた」という経験は、当事者に強いストレスと無力感を残しますが、その経験を組織としてのリスクマネジメント向上につなげる視点が重要です。
具体的には、「どのタイミングで法律相談が必要か」「誰が最初の相談窓口になるべきか」「どの範囲まで情報をまとめておくか」といった院内ルールを整備し、利益相反で断られたケースも含めて振り返りを行うことで、次の事例でのスムーズな対応が期待できます。
また、医療機関として「病院側の顧問弁護士」と「職員個人が相談できる中立的な相談窓口」を意図的に分けることも、利益相反のリスクを低減する一つの方法です。
顧問弁護士は主に病院組織のリスク管理と防衛に重点を置きつつ、職員個人がハラスメント被害や労務紛争などを相談できる第三者窓口(労働局、産業医、専門NPOなど)を併設することで、「どこに、何を、どの順番で相談するか」が明確になり、無用な利益相反を避けやすくなります。
医療紛争が大きくなる前に、早期の相談・情報共有・組織的対応が取れるよう、院内研修やeラーニングで「利益相反」「守秘義務」「弁護士とのコミュニケーション」をテーマにした教育コンテンツを用意することも有効です。
とくに若手医師や看護師にとって、「弁護士に断られたら終わり」と感じないための知識と心構えを共有しておくことは、バーンアウト予防やキャリア保護の観点からも意味があります。
さらに、最近ではAIやオンライン相談ツールを活用した法務相談の入り口が増えており、初期段階の情報整理やリスク把握を自分のペースで進めることも可能になっています。
ただし、AIやインターネット情報はあくまで補助的手段であり、最終的な法的判断や対応方針は、利益相反を適切に管理できる弁護士との信頼関係を前提としたうえで決定していくことが、医療従事者の身を守り、同時に患者や社会の信頼を守るための現実的な道筋と言えるでしょう。
医療者向けの弁護士相談の流れや注意点の整理に役立つ参考リンク(医師・看護師向けの法律相談の基礎や、医療事故・労務問題での相談のポイントが解説されています)
医療記事の制作方法とは?外注の依頼方法や監修の重要性
弁護士の利益相反チェックや守秘義務の考え方を詳しく知りたい場合の参考リンク(弁護士職務基本規程や弁護士法の条文に基づき、利益相反の具体例や相談受付時の注意点が記載されています)
利益相反の確認について(ご相談をご検討の皆様へ) - 弁護士法人橋本総合法律事務所
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