従来の対面授業やリアルタイムのオンライン授業(同期型)とは異なり、オンデマンド授業は非同期型の教育として位置づけられています。具体的には、学習管理システム(LMS)や専用プラットフォームにアップロードされた動画教材、音声付きパワーポイント、講義資料などを学生が個別に学習します。
オンデマンド授業の主な特徴として、以下の点が挙げられます。
参考)オンデマンド授業とオンライン授業の違いは何?どっちが学習しや…
「オンデマンド授業」と「オンライン授業」は混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。オンライン授業は、インターネットを通じて行われる授業の総称であり、大きく2つのタイプに分けられます。
参考)オンデマンド授業とは?オンライン授業との違いを徹底解説
| 特徴 | オンデマンド授業 | オンライン授業(リアルタイム) |
|---|---|---|
| 配信形式 | 録画教材 | ライブ配信 |
| 時間制約 | なし(非同期型) | あり(同期型) |
| 双方向性 | 限定(質疑応答は別枠) | 高い(リアルタイム交流) |
| 視聴の柔軟性 | 巻き戻し・早送り可能 | リアルタイム視聴のみ |
| 学習ペース | 自己調整可能 | 教員のペースに依存 |
一般的に「オンライン授業」というと、ZoomやSkypeなどを用いたライブ形式の授業を指すことが多く、教員と学生が同時に参加してリアルタイムで進行します。一方、オンデマンド授業は「ビデオレター方式」とも表現され、教員が事前に録画した教材を学生が視聴する形式です。
参考)https://wa3.i-3-i.info/diff1123class.html
オンデマンド授業の学習効果については、複数の研究で分析が行われています。特に新型コロナウイルス感染症の拡大以降、多くの教育機関でオンデマンド授業が導入され、その教育効果に関する実証研究が進みました。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390572174848580608
教育心理学の観点から行われた研究では、2019年度の対面授業と2020年度のオンデマンド授業の最終試験結果を比較したところ、興味深い結果が得られました。オンデマンド授業では「受講者間の点数格差が大きい」ことが判明し、これは学習意欲の高い学生にとって、非同期型のオンライン授業が対面授業以上に効果的に機能することを示唆しています。
医療従事者向けの教育において、オンデマンド授業は特に有効な学習形態として注目されています。医療現場では、シフト勤務や夜勤、緊急対応など不規則な勤務体系が一般的であり、従来の対面型やリアルタイム型の教育参加が困難なケースが多いためです。
実際に、昭和医科大学附属看護専門学校では、対面式のほか、オンラインのオンデマンド式で講義動画を視聴する形式を導入しています。これにより、従来の対面式教育を超え、より深く高度な教育内容を効率よく学べる環境が実現されています。
医療従事者向けオンデマンド授業の具体的な活用例として、以下のような形式が考えられます。
| 教育内容 | オンデマンド教材の例 | 活用メリット |
|---|---|---|
| 臨床手技 | 手技の動画デモンストレーション | 繰り返し視聴して手技を習得 |
| 薬剤学 | 薬剤作用機序の解説動画 | 複雑な機序を自分のペースで理解 |
| 症例検討 | 症例プレゼンテーション資料 | 臨床現場の経験を踏まえた深い学習 |
| ガイドライン | 最新ガイドラインの解説 | 更新情報を迅速に共有 |
医療従事者教育におけるオンデマンド授業のメリット。
さらに、医療従事者の生涯教育や専門認定の更新要件を満たすための継続教育(CE)としてもオンデマンド授業は有効です。アメリカの看護師国家試験準備などでは、オンデマンド形式の学習プラットフォームが広く活用されています。
オンデマンド授業で学習効果を最大化するためには、いくつかの重要なポイントがあります。研究データから明らかになっているのは、学習者の「自律性」と「学習戦略」が大きく影響するということです。
効果的な学習戦略。
1. 学習計画を立てる
オンデマンド授業は時間制約がないため、逆に学習計画が不明確になりがちです。週ごとの学習目標を設定し、スケジュールを明確にすることが重要です。カレンダーアプリや学習管理ツールを活用して、可視化することをお勧めします。
2. アクティブ・ラーニングを取り入れる
動画を受動的に視聴するだけでは、学習効果は限定的です。以下のアクティブな学習方法を組み合わせましょう。
- 動画視聴中にメモを取る
- 視聴後に要約を作成する
- 関連する問題や課題に挑戦する
- 同僚や学習仲間とディスカッションする
参考)https://www.jsise.org/society/committee/2020/special/TR-035-07-C-1-1.pdf
3. 反復学習を計画的に行う
オンデマンド授業の最大の利点は、繰り返し視聴できることです。しかし、単に「もう一度見る」だけでなく、以下のステップで反復学習を行うと効果的です。
- 1回目:全体像を把握(早送り可)
- 2回目:重要なポイントを詳細に理解
- 3回目:自分の言葉で説明できるか確認
4. 学習環境を整える
集中できる学習スペースを確保し、通知をオフにするなど、外部の気が散る要素を排除することが重要です。医療従事者は特に、勤務後の疲れた状態で学習するケースが多いため、短時間でも集中できる環境作りが鍵になります。
5. フィードバックを求める
オンデマンド授業では、教員からの直接的なフィードバックが限定的です。Teamsなどのツールを活用して、疑問点や課題の添削を積極的に求めましょう。また、同僚と学習内容を共有し、互いにフィードバックし合うことも効果的です。
参考)https://axies.jp/_files/conf/conf2022/paper/15AM1D-2.pdf
この論文では、オンデマンド授業での学習成果の二極化について詳細に分析されており、学習者の自主性を高めるための具体的な工夫が提案されています。
「対面型講義とオンデマンド型講義に関する教育効果の比較研究」
対面授業とオンデマンド授業の学習効果を比較した実証研究で、両者のメリット・デメリットが明確に示されています。
ここまでは、オンデマンド授業を「教育ツール」としての視点で解説してきましたが、実は医療現場においても、オンデマンドの概念は意外な形で応用されています。これは多くの医療従事者が気づいていない、オンデマンド授業の「副次的な効果」です。
1. 臨床判断のシミュレーション学習
オンデマンド授業の形式を応用して、仮想患者の症例に対面する「臨床判断シミュレーション」が、一部の医療機関で導入されています。特定の症状や検査結果が提示され、学習者が「次に何をすべきか」を判断する形式です。この学習は、以下の点でオンデマンド授業の概念と共通しています。
2. コミュニケーションスキルのトレーニング
医療従事者にとって、患者や家族とのコミュニケーションは極めて重要です。オンデマンド形式の「ロールプレイ動画」を用いたトレーニングが、特定の病院で実施されています。具体的な手法は以下の通り。
この手法は、従来の対面型ロールプレイと比較して、以下のメリットがあります。
3. 緊急対応のトレーニング
救急やICUなど、緊急対応が求められる部署では、オンデマンド型のトレーニングが有用です。特に、以下の場面で活用されています。
これらのトレーニングは、通常の業務時間中に実施することが困難な場合が多く、オンデマンド形式であれば、自分の空き時間に学習できます。さらに、緊急時に対応手順を「思い出す」ためのリファレンスとしても機能します。
4. 地域医療連携の強化ツール
意外な応用例として、オンデマンド授業のプラットフォームを「地域医療連携」に活用しているケースがあります。地域内の異なる医療機関(病院、診療所、訪問看護ステーションなど)が、同じプラットフォームで症例検討や最新の治療法を共有することで、医療の質を均一化する試みです。
この手法のメリット。
5. 患者教育への応用
オンデマンド授業の概念は、医療従事者自身の学習だけでなく、患者教育にも応用可能です。例えば。
これにより、患者は自分のペースで学習でき、医療従事者は説明時間を短縮できるという、双方にメリットがあります。
医療教育におけるアクティブ・ラーニングの具体的手法について、事例研究が紹介されています。
「オンデマンドとオンタイムを併用した双方向授業の実践報告」
オンデマンドとリアルタイム授業を組み合わせたハイブリッド型の教育手法について、実践事例が報告されています。
医療従事者として、オンデマンド授業の概念を単なる「学習ツール」として捉えるだけでなく、自身の臨床現場や患者教育にも応用できる可能性を考えると、より深い学習効果が期待できるでしょう。