長尾和宏氏の著書を「終末期専門の難しい本」と思い込んでいる医療従事者ほど、薬の過剰投与で患者家族からクレームを受けるリスクが高い。

2012年に出版された『「平穏死」10の条件』は、約10万部を売り上げたベストセラーです。 胃ろうや抗がん剤、人工呼吸器といった延命処置を「いつやめるか」という問いを医療現場に突きつけた1冊です。
医療職が「最期まで全力で治療することが正しい」という前提で動くと、患者・家族の意向と衝突することがあります。これが問題です。
長尾氏は1995年の開業以来、40年間で2,500人以上の患者の最期を看取ってきました。 その経験が本書の核心にあります。具体的には以下のような「平穏死を妨げる10の行為」が示されています。
これらは医療従事者が「よかれと思って行う」ことと重なります。意外ですね。
患者の「自然な死」を支えるには、医療職側のパラダイムシフトが必要であると、本書は一貫して主張しています。ACPの実践ツールとして、日本医師会が公開している「人生会議(ACP)普及・啓発リーフレット」も参照価値があります。
2016年出版の『薬のやめどき』は、医療従事者にとって処方見直しの実践的視点を与える1冊です。 長尾氏は「製薬会社の利益のために薬が推奨される」という批判的視点を盛り込みながら、現場で起きる過剰投与の問題を具体的に示しています。
高齢患者が1日に10種類以上の薬を飲んでいるケースは珍しくありません。つまりポリファーマシーの問題です。
厚生労働省の調査では、75歳以上の約4割が6種類以上の薬を処方されているというデータがあります。この状況で薬の「やめどき」を見極めることは、副作用や転倒リスクの軽減に直結します。
看護師・薬剤師がこの視点を持つことで、医師への処方見直しの提案ができます。これは使えそうです。
長尾氏は「薬をやめることも医療行為」と強調します。服薬指導の場面で患者に「この薬を飲み続ける必要はあるのか」と問いかける姿勢そのものが、患者の安全を守ります。
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(PDF)
「歩くだけで治る」というタイトルは医療従事者には誇張に聞こえるかもしれません。しかし、シリーズ累計21万部超というデータは、患者層の需要を如実に示しています。
歩行と健康の関係は、医学的にも多くの根拠があります。結論は「運動は薬と同等の効果を持つ」です。
長尾氏は著書の中で、「医師が処方する前に歩くことを勧めれば、薬の量を減らせる患者がいる」と述べています。医師・看護師が生活指導の際に本書のデータを活用することで、患者への一次予防の動機づけが強化されます。
患者に「先生に言われたから歩く」より「自分でも読んで納得した」という状態を作ることが、アドヒアランス向上に効きます。いいことですね。
外来診療で生活指導に時間がとれない場合、本書を患者への読書推薦リストとして活用する医療機関も出てきています。
国立健康・栄養研究所「身体活動・運動の健康への効果」(PDF)
長尾氏は医師向け・一般向けの著書だけでなく、看護師向けの実務書も複数執筆しています。 代表的なのが秀和システムの「ナースのためのスキルアップノート」シリーズです。
これらは「研修書として使える」という現場評価を受けており、新人・中堅を問わず活用されています。厳しいところですね、専門書は難易度が高くて読みにくいものが多い中、本シリーズは現場目線の平易な文体が特徴です。
緩和ケアのキホンでは、特に以下の内容が医療職に支持されています。
緩和ケアチームに入る前の予習として、または病棟内勉強会のテキストとして最適です。これが基本です。
緩和ケアの知識をさらに深めたい場合は、日本緩和医療学会が提供しているe-learningコンテンツ「ELNEC-J」も選択肢となります。
日本緩和医療学会 公式サイト(ガイドライン・教育コンテンツ)
医療従事者が見落としがちな長尾氏の著書の強みは、「記録」と「看取りの振り返り」の重要性を繰り返し述べている点です。これはあまり知られていません。
在宅医療の現場では、患者本人の意向を文書で残すことが、後のトラブル防止に直結します。長尾氏は40年で2,500人以上を看取った経験から、「口頭確認だけの看取りが家族間の争いを生む」と繰り返し指摘しています。
看取り後の「デスカンファレンス」も、長尾氏の著書が重視するテーマのひとつです。看取りに携わった医師・看護師・介護士が1件1件振り返ることで、次の看取りの質が上がります。これが原則です。
在宅医療のスタッフが1人でも欠けた日の対応、深夜の急変時の連絡体制、家族が動揺しているときの言葉かけ。これらは教科書に載っていない実践知であり、長尾氏の著書にはその具体例が散りばめられています。
医療従事者として「知識として知っている」と「患者の前で実践できる」の間には大きな溝があります。痛いですね。長尾氏の著書はその溝を埋めるための「現場の言語」で書かれている点が、学術書にない価値です。
自施設でACPの仕組みを整えたい場合、厚生労働省が提供する「人生会議」普及ツールや、日本在宅医学会が公開している研修プログラムが参考になります。
一般社団法人 日本在宅医学会(在宅医療の研修・ガイドライン情報)
| 症状 | 緊急度 | 対応 |
|---|---|---|
| 腱の痛み・腫れ(特にアキレス腱) | 🔴 高 | 即時中止・安静・整形外科紹介 |
| 手足のしびれ・感覚異常 | 🔴 高 | 即時中止・神経内科紹介 |
| 胸痛・背部痛・腹部の激痛 | 🔴 最高(大動脈解離疑い) | 即時中止・救急搬送 |
| 意識障害・けいれん | 🔴 最高 | 即時中止・救急搬送 |
| QTc延長・動悸・失神 | 🔴 高 | 即時中止・循環器科紹介 |
| 強い発疹・水疱(SJS疑い) | 🔴 高 | 即時中止・皮膚科緊急紹介 |
| 下痢(血便・水様便が続く) | 🟡 中 | 中止検討・CDI除外目的で便培養 |
| 軽度の頭痛・吐き気 | 🟢 低 | 経過観察・症状増悪なら中止 |