
子供に人工呼吸を行う前段階として、反応と呼吸の評価を系統立てて行うことが重要になる。日本医師会などの一次救命処置ガイドラインでは、周囲の安全確認の後、呼びかけと刺激で反応の有無を確認し、反応がなければただちに呼吸と普段通りの呼吸かどうかを評価する流れを示している。
参考)子どもの一次救命処置|日本医師会 救急蘇生法
この時点で「普段通りではない呼吸(あえぎ呼吸など)」であれば心停止前後の状態と判断し、胸骨圧迫と人工呼吸を含む心肺蘇生(CPR)に進むべきとされている。
参考)https://www.119tsuyama.jp/wp-content/uploads/2025/03/g2020-cpr_child.pdf
医療従事者の場合、モニタリング機器や酸素投与がすでに行われている場面も多く、「人工呼吸を追加すべきか」「胸骨圧迫を開始すべきか」で迷うことがある。SpO₂や波形だけに頼らず、胸郭の動き、皮膚色、意識レベルなど、目の前の臨床像を優先して判断することが推奨される。
参考)https://www.yamagata.med.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/child-guidbook_24.pdf
CPR開始を迷う境界場面では、「迷ったら開始する」が基本であり、ガイドラインも軽度の過剰蘇生より心肺蘇生の遅れの方が予後に悪いと示している。
参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/files/cpr.shouni-guidebook.pdf
人工呼吸 やり方 子供においては、CPR全体の流れの中で人工呼吸の位置づけを理解することで、過度に「吹き込みの質」に意識が偏って胸骨圧迫が遅れることを防ぎやすくなる。
子供の人工呼吸でまず重要なのが、解剖学的特徴を踏まえた気道確保であり、基本は頭部後屈あご先挙上法(head tilt–chin lift)を用いる。
片手で額を押さえ、もう一方の手の指先を下顎先端の骨部分に当てて持ち上げることで、舌根沈下による上気道閉塞を解除するが、過度な後屈は気道をかえって狭窄させる点が子供特有の注意点になる。
小児(1歳以上)では、気道を確保したうえで、実施者の口で子供の口を覆い、額側の手で鼻をつまんで空気漏れを防ぎながら、1回あたり約1秒かけて胸が軽く上がる程度の量を吹き込むのが推奨される。
参考)https://www.city.ono.hyogo.jp/ono119/1/kyuukyuu/2/9219.html
この「胸が軽く上がる程度」という表現はやや抽象的だが、過換気は胃膨満を招き嘔吐リスクや誤嚥を高めるため、胸郭の動きを凝視しながら必要最小限の換気量に留めることが重要である。
人工呼吸 やり方 子供では、1回約1秒、2回連続というリズムを意識することで、胸骨圧迫の中断時間を最小限に保ちつつ有効換気を確保できる。
参考)https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/17793.pdf
もう一つの実践的ポイントとして、顔面サイズが小さい子供では「口と鼻の密着」が甘くなりやすく、わずかな隙間からもリークが生じる。
参考)心肺蘇生法の手順(乳児・小児)|茅ヶ崎市
特に口対口人工呼吸では、頬を軽く押さえて口角の隙間を減らす、吹き込み直前にもう一度密着を意識して調整するなど、細かな工夫で換気効率を高められる。
同時に、医療従事者はBVM(バッグバルブマスク)を使う場面も多いため、マスクリークを避ける「E-Cクランプ法」と、胸骨圧迫との役割分担(2人法)が現場での安全性と質の高い人工呼吸を担保する。
1歳未満の乳児では、人工呼吸 やり方 子供の中でも特に口対口鼻人工呼吸が特徴的であり、実施者の口で乳児の口と鼻を同時に覆い、約1秒かけて胸がわずかに上がる程度に吹き込む。
乳児は肺容量が非常に小さく、成人と同じ感覚で吹き込むと容易に過換気となり、胃膨満や気胸のリスクが増加するため、「自分のほほをふくらませない程度」の軽い吹き込みが実務的な目安として有用である。
胸骨圧迫に関しては、乳児では両乳頭を結ぶ線の少し足側の胸の真ん中を2本指で、胸の厚さの約1/3沈む深さまで、1分間に100〜120回のテンポで行うことが多くのガイドブックで示されている。
小児(1歳以上)では、胸の真ん中を片手または両手で同様に胸の厚さの約1/3沈む深さまで圧迫し、テンポはやはり100〜120回/分を保ち、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせを絶え間なく繰り返す。
ここで意外と知られていないのが、「胸骨圧迫を10秒以上中断すると、せっかく上がった冠動脈灌流圧がほぼゼロに戻る」という点であり、人工呼吸の準備や体位調整に時間をかけすぎると循環再開率が低下し得る。
そのため、人工呼吸 やり方 子供においても、吹き込みの質と同時に「いかに圧迫中断を短くするか」が予後を左右するパラメータになる。
特に乳児では、体が小さいがゆえに実施者の姿勢が崩れやすく、圧迫位置のずれや深度不足が生じやすいため、指2本法での垂直圧迫と、圧迫のたびに胸が完全に戻る(リコイル)ことを意識する必要がある。
人工呼吸 やり方 子供を医療従事者向けに考える際、一般市民向けガイドラインに比べて「人工呼吸を避けない」ことが前提になる一方で、感染対策の視点が強く求められる。
口対口(口対口鼻)人工呼吸を実施する場合でも、ポケットマスクやフェイスシールドを用いることで飛まつ・血液曝露のリスクを減らしつつ、有効な換気を提供できる。
新興感染症流行期には、一部ガイドラインで胸骨圧迫中心の蘇生が推奨された時期もあったが、子供では呼吸原性心停止が多いことが知られており、人工呼吸を省略すると予後悪化につながる可能性が指摘されている。
したがって、適切な個人防護具(マスク、アイシールド、手袋など)と、できる限りBVMや酸素投与を併用しつつ、人工呼吸を積極的に行うことが医療従事者の役割といえる。
やや意外なポイントとして、人工呼吸の失敗要因として「気道確保不十分」と並んで「過度な頸部屈曲・過伸展」が挙げられており、小児の後頭部は相対的に大きいため、仰臥位に寝かせたままだと自然に頸部前屈位になってしまう。
薄いタオルやシーツを肩甲部の下に入れて肩を少し持ち上げることで、中立〜軽度後屈位を取りやすくなり、これだけで換気の成功率が上がるケースも報告されている。
さらに、胃膨満が顕著な場合には、必要に応じて慎重な胃内容物の排除や挿管など上位の気道管理手段を検討するが、その間も胸骨圧迫と最小限の換気を可能な範囲で維持することが重要になる。
人工呼吸 やり方 子供の実務では、「自発呼吸があるが浅く遅い」「痙攣直後で呼吸が不規則」など、マニュアルに書かれていないグレーゾーンが頻繁に現れる。
こうした場面では、胸郭の動き・努力呼吸の有無・酸素飽和度・チアノーゼの有無などを組み合わせて評価し、「自発呼吸を補助する人工呼吸(補助換気)」としてBVMを用いる選択肢もある。
独自の視点として、人工呼吸や胸骨圧迫の質を高めるために、医療チーム内で「声かけスクリプト」をあらかじめ決めておく方法がある。
例えば、圧迫者が「30、交代」と声を出し、換気者が「2回、OK」と必ず返答するルールにすることで、圧迫と人工呼吸のリズムが安定しやすく、CPR中断も減らせる。
また、小児・乳児では体格差が大きいため、事前シミュレーションで「3歳相当の人形」「乳児人形」など複数サイズを用意し、圧迫深さや頭位の感覚を体で覚えておくと、実臨床で迷いが減る。
さらに、人工呼吸 やり方 子供では、AEDの使用タイミングに気を取られて換気が疎かになることがあるが、ガイドラインではAED装着や解析中も可能な限り胸骨圧迫を継続することが強調されている。
AEDの装着やパッド貼付は別のメンバーが担当し、圧迫と人工呼吸の担当者は「AEDに気を取られない」ことを共有しておくと、チーム全体の蘇生品質を高く保つことができる。
このように、単に手技の手順を覚えるだけでなく、チーム運用や事前準備の工夫まで含めて設計することで、子供の人工呼吸の成功率と安全性を大きく底上げできる。
子どもの一次救命処置の全体像とフローチャートを把握する参考として、日本医師会の解説ページが役立つ。
子どもの一次救命処置|日本医師会 救急蘇生法
乳児・小児に特化した心肺蘇生ガイドブックとして、地方自治体が公開しているPDFは、図解や写真つきで手技の確認に有用である。
乳児・小児に行う心肺蘇生法(CPR)ガイドブック(青森県)
胸骨圧迫の深さ・テンポや、口対口鼻人工呼吸の具体的な姿勢を詳しく解説する資料として、医師会・消防本部の小児CPRマニュアルも確認しておくと実技トレーニングに役立つ。
子どもの心肺蘇生法ガイドブック(山形県医師会)
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