
ジアゼパム静注の添付文書では「一般に成人には、初回2mL(ジアゼパムとして10mg)を筋肉内又は静脈内にできるだけ緩徐に注射する」とされており、必要に応じて3~4時間ごとの追加投与が許容されています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070580.pdf
静脈内投与では「なるべく太い静脈を選び、2分以上かけて緩徐に注射する」と明記されており、急速投与による血圧低下や呼吸抑制のリスク低減が意図されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2003/P200300040/80012600_14400AMZ00435_A100_2.pdf
てんかん様重積状態の治療では、初回10~20mg静注、最大40mgまでを推奨する文献があり、5~10分後に追加投与を検討することが示されていますが、患者の年齢・体重・基礎疾患を踏まえた個別調整が不可欠です。
Friedmanらのデータを含むジアゼパム注射液の審査報告書
| 項目 | 成人標準 | 備考 |
|---|---|---|
| 初回用量 | 10mg静注または筋注 | 2mL製剤の場合2mL投与 |
| 追加投与間隔 | 3~4時間毎に必要時追加 | 過鎮静がないことを確認 |
| 静注速度 | 2分以上かけて緩徐静注 | 太い静脈を選択 |
| 最大用量(重積) | 合計40mgまで静注推奨 | 循環・呼吸の状態を見ながら |
日本神経学会のてんかん重積状態ガイドラインでは「ジアゼパムは筋注ではなく静注する」「生理食塩水・ブドウ糖で混濁するため希釈せずに使用する」と明示されており、準備段階から静注ルートと原液使用に留意する必要があります。
参考)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/sinkei_epgl_2010_09.pdf
同ガイドラインは、初回投与で効果不十分な場合に5~10分後の追加投与を認めており、反応を見ながら速やかに別系統薬(フェニトイン、ホスフェニトイン、レベチラセタムなど)へ切り替えるアルゴリズムの一部としてジアゼパム静注を位置付けています。
意外なポイントとして、重積治療の文献の中には「ジアゼパムは経静脈投与後の分布と消失が比較的速く、持続的鎮静よりも初期治療に適しており、その後は他の抗てんかん薬による維持が推奨される」とする指摘があり、救急現場でも「時間稼ぎ薬」としての位置づけを共有しておくと、後続治療のタイミングを誤りにくくなります。
てんかん重積状態ガイドライン全文
ジアゼパム静注の禁忌には、急性閉塞隅角緑内障、昏睡、重症筋無力症、ショック、バイタルサイン不良の急性アルコール中毒、リトナビルやニルマトレルビル・リトナビル投与中などが挙げられており、静注前に「意識レベル」「筋力低下」「眼科既往」「併用薬」を短時間でスクリーニングする習慣が重要です。
参考)ジアゼパム注射液10mg「タイヨー」の基本情報(薬効分類・副…
主な有害事象として、嗜眠・傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、低血圧、頻脈、脱力感などが報告されており、投与中および投与後にはSpO₂、呼吸数、血圧・脈拍を少なくとも5~10分ごとに確認することが推奨されます。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/sinkei/SR3306-02.pdf
新生児・乳幼児では離脱症状(易刺激性、神経過敏、振戦、低体温など)が問題となることがあり、「短時間の静注だから安全」という誤解が生じやすいため、年齢・体重に応じた慎重な適応と、小児領域ガイドラインの確認が望まれます。
ジアゼパム注射液10mg「タイヨー」添付文書
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00053596.pdf
有機リン中毒に伴う痙攣に対して、ジアゼパム10mg筋注を上限30mgまで使用するプロトコールが提示されており、アトロピンやオキシム製剤と併用しつつ痙攣抑制を図るという位置づけが審査報告書に整理されています。
緩和医療領域では持続的鎮静にミダゾラム皮下・静注が標準として用いられており、ジアゼパムは坐薬による経直腸投与が推奨される場面が多く、持続静注よりも「一時的な鎮静・鎮痙」を目的として選択される傾向があります。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/sedation_2018/05_05.pdf
このように、鎮静薬の中でジアゼパム静注は「迅速な抗不安・鎮痙」を担う一方、持続的鎮静や終末期鎮静ではミダゾラムやフェノバルビタールなどに主役を譲ることが多いため、各薬剤の薬物動態と適応場面をチーム内で共有しておくと、より合理的な薬剤選択につながります。
日本緩和医療学会 鎮静ガイドラインの投与方法・評価・ケア
てんかん重積状態のガイドラインが「ジアゼパムは生理食塩水・ブドウ糖で混濁するため希釈せずに静注する」と明記しているにもかかわらず、現場では「ほかの静注薬と同じく希釈して投与してしまう」ケースが散見され、薬剤師との連携による調製手順の標準化が重要な改善ポイントです。
静注ルートについては「なるべく太い静脈を選ぶ」とされますが、救急・病棟では末梢静脈ルートしか確保できないことも多く、実務的には「ジアゼパム静注を行う患者では、可能であれば早期に中心静脈ポートや太い末梢ルートを確保しておく」ことをプロトコール化しておくと、血管痛や局所反応を減らせます。
また、ジアゼパムは第三種向精神薬として位置づけられており、離脱症状や依存の問題が静注単回投与でも話題になりにくい一方、「繰り返し静注される長期入院患者」でリスクが潜在化しやすいため、電子カルテ上での累積投与量の見える化や、看護師向けの教育資料に「依存の視点」を含めることが、チーム医療としての質を高める意外な工夫になります。
ジアゼパム錠および注射剤の総合的な情報
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00069066.pdf
現場での運用プロトコールや教育資料を作成する際、あなたの施設では「てんかん重積」「有機リン中毒」「緩和ケア」のどの場面でジアゼパム静注を想定していることが多いですか?
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