あなたは「男性側の手術だから女性の年齢は関係ない」と思っていませんか。実は男性の保険適用回数も女性側の年齢や回数制限にひもづいて変わります。

2022年4月の診療報酬改定で、生殖補助医療の「採卵・採精」から「胚移植」までの基本的な一連の治療が保険適用の対象になりました。男性不妊においては、手術用顕微鏡を使って精巣内から精子を回収する精巣内精子採取術(TESE)が代表的な保険適用手術です。
具体的には、通常のTESEに加え、顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)も保険コードK838-2として保険診療の対象に含まれています。イメージとしては、これまで自費で20万円前後かかっていた手術が、3割負担なら数万円程度まで下がる計算です。
参考)https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-k/repro/_src/3159/TESE%202022.5.pdf
つまり手術単体の負担は大幅に軽くなったということですね。ただし実施には医療機関側の施設基準や医師の実施基準を満たす必要があり、どの医療機関でも同じように保険適用できるわけではありません。
ここが誤解されやすいポイントです。保険適用となる生殖補助医療の年齢制限は「患者とパートナーのうち女性の年齢」を基準にしており、治療開始日に43歳未満であることが条件になります。
さらに回数制限も女性側の年齢で区切られています。体外受精・顕微授精の開始時点で女性が40歳未満なら1子ごとに6回まで、40歳以上43歳未満なら1子ごとに3回までです。
男性側の年齢そのものには制限が明記されていません。そのためTESEなどの男性不妊手術も、パートナーの年齢や治療計画のタイミングと連動して保険適用の可否が決まる形になります。
これは意外ですね。医療従事者として患者に説明する際は、男性側の年齢だけでなくパートナーの年齢や既往の治療回数も必ず確認する必要があります。年齢確認を怠ると保険適用の判断を誤るリスクがあるため、電子カルテや問診票にパートナーの年齢欄を必ず設ける運用が安全です。
基本的な治療が保険適用になった一方で、その過程で追加される「オプション治療」の扱いは一律ではありません。保険適用されたものもありますが、先進医療として保険診療と併用できるものも存在します。
先進医療とは、まだ保険収載されていない新しい医療技術のうち、一定の安全性・有効性が認められ、保険診療との併用が特別に許可されたものを指します。通常、保険診療と自由診療を組み合わせると混合診療とみなされ、全体が自費になってしまいますが、先進医療はその例外です。
つまりオプション治療の種類次第で費用構造がまったく変わるということです。どの技術が先進医療に指定されているかは施設によって取り扱いが異なるため、事前に医療機関の告示内容を確認しておくと安心です。
保険適用が始まった後も、自治体独自の助成制度が男性不妊治療の自己負担をさらに軽減してくれる場合があります。ある自治体の例では、精子を精巣または精巣上体から採取する手術を行った場合、初回の治療に限り1回あたり30万円までの助成が受けられます。
この助成の対象は「保険適用外の手術費用や凍結費用」であり、検査費用自体は対象になりません。制度が地域ごとに異なるため、自治体の窓口やホームページでの確認が欠かせません。
これは使えそうです。地域独自の助成は保険適用と別枠で用意されていることが多いので、患者に案内する際は居住自治体名で検索してもらうよう伝えるとスムーズです。
保険適用範囲や助成制度が整理されても、実際にTESEなどの手術を保険診療で受けられるかは、医療機関の施設基準に大きく依存します。すべての泌尿器科やクリニックが対応しているわけではありません。
そのため患者を紹介する際は、単に「不妊治療専門」という表記だけでなく、生殖補助医療の実施医療機関として登録されているかを確認する視点が重要です。登録の有無で保険適用の可否そのものが変わるため、確認漏れは大きなトラブルにつながります。
登録状況の確認が条件です。厚生労働省が公開する不妊治療の保険適用に関する資料には、対象となる医療機関の基準が詳しく記載されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000929827.pdf
厚生労働省が公開する不妊治療の保険適用に関する詳細資料はこちら