甘草を含む漢方を2剤以上併用している患者の約30%が、低カリウム血症リスクを把握されないまま処方を受けていることがあります。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/188.pdf

ツムラ50番、正式名称「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」は、17種類の生薬を組み合わせた漢方製剤です。 適応は蓄膿症(副鼻腔炎)・慢性鼻炎・慢性扁桃炎・にきびで、体力中等度以上・皮膚がやや浅黒く炎症を繰り返しやすい体質(いわゆる解毒証体質)の患者に処方されます。
参考)https://www.tsumura.co.jp/products/item/050.pdf
主な副作用として報告されているのは、発疹・かゆみなどの皮膚症状と食欲不振・胃部不快感・悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状です。 これらは比較的頻度が高い副作用です。
重篤な副作用には、偽アルドステロン症・肝機能障害・間質性肺炎・腸間膜静脈硬化症があります。 医療従事者として見逃せないのはこの4つです。
参考)ニキビ漢方薬50「荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)」 -…
つまり、軽微な副作用から重篤なものまで幅広く発生しうるということですね。
偽アルドステロン症は、甘草(カンゾウ)に含まれるグリチルリチン酸が過剰になることで起きます。 具体的には高血圧・浮腫(むくみ)・低カリウム血症・手足のしびれ・脱力感・こむら返りが主な症状です。
これは使えそうな情報ですね。
見落とされやすい点は「数週間あるいは数年にわたって服用してから症状が出始める」という遅発性の発症パターンです。 短期処方では問題なかったからといって安心できません。
特にリスクが高いのは以下の患者群です。
甘草含有製剤の重複が条件です。
医療用ツムラ50の1日薬価は138.75円、1包(2.5g)あたり46.25円です。 30日分3割負担で薬剤費は約1,249円ですが、偽アルドステロン症を見逃して入院加療に至れば、患者負担はその数十倍に膨らみます。
ツムラ荊芥連翹湯エキス顆粒(医療用)添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
添付文書の「重要な基本的注意」と「副作用」の項目で、偽アルドステロン症に関する具体的な記載を確認できます。
荊芥連翹湯に含まれる黄芩(おうごん)や山梔子(さんしし)は、まれに肝臓に負担をかけることがあります。 肝機能障害の初期症状は倦怠感・食欲低下・皮膚・白目の黄染・濃色尿で、服用中に現れた場合は速やかにALT・AST・γ-GTPのチェックが必要です。
参考)荊芥連翹湯(ツムラ50番):ケイガイレンギョウトウの効果、適…
間質性肺炎については、漢方薬全般に共通するリスクとして知られています。 荊芥連翹湯にも少量の柴胡(さいこ)が含まれており、特に他の薬との相互作用で発症リスクが高まります。「長引く乾性咳嗽・労作時息切れ・発熱の三徴候」が出現したら即座に服用を中止し、胸部X線・CT精査へ移行する必要があります。
厳しいところですね。
腸間膜静脈硬化症は山梔子(サンシシ)の長期服用によって引き起こされる比較的新しく注目されている副作用です。 便秘・腹痛・腸管浮腫が繰り返し出現する場合は疑いを持ち、大腸内視鏡または腹部CT検査を検討します。5年以上の長期服用者では特に注意が必要です。
下表に重篤副作用の初期症状と対応をまとめます。
| 副作用 | 主な初期症状 | 関与する生薬 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 偽アルドステロン症 | 浮腫・血圧上昇・脱力・こむら返り | 甘草(カンゾウ) | 服用中止・電解質確認・降圧対応 |
| 肝機能障害 | 倦怠感・黄疸・濃色尿・AST/ALT上昇 | 黄芩・山梔子 | 服用中止・肝機能精査 |
| 間質性肺炎 | 乾性咳嗽・息切れ・発熱 | 柴胡(サイコ)他 | 即時中止・胸部CT・呼吸器科受診 |
| 腸間膜静脈硬化症 | 繰り返す腹痛・便秘・腹部膨満 | 山梔子(サンシシ) | 服用中止・大腸内視鏡 |
多くの解説は「証に合った患者への副作用」にフォーカスしますが、実臨床でむしろ問題になりやすいのは「証が合っていない患者への処方」です。 これは見逃しがちな観点です。
荊芥連翹湯は清熱(体の熱を冷ます)を主体とする漢方薬です。 このため、もともと冷え性で炎症や熱感がない「寒証」の患者に処方すると、以下の逆症状が出ることがあります。
「処方して1か月、全然改善しない」という状況は副作用ではなく「証の不一致」が原因であることが少なくありません。 1か月で効果を実感できない場合は無理に継続せず、専門家に処方の見直しを相談することが原則です。
証の確認が基本です。
具体的な証の判断ポイントは次の通りです。
これが条件です。
特に高齢者では「体力中等度以上」という条件を満たさないケースが多く、若い患者向けに設計された処方であることを意識する必要があります。 実際、一貫堂医学では荊芥連翹湯は青年期(思春期〜20代)の体質改善薬として位置づけられていました。
副作用を未然に防ぐには、処方前・処方中・処方後の各段階での確認が必要です。具体的なチェックポイントを整理します。
📌 処方前の確認
📌 処方中の定期モニタリング
📌 患者への服薬指導ポイント
これだけ覚えておけばOKです。
なお、ニキビ治療においては日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」で荊芥連翹湯が漢方薬の中で唯一、炎症性・非炎症性両方のニキビへの効果が認められています。 ただしあくまで補助的・代替的な立ち位置の薬であり、第一選択にはなりません。
荊芥連翹湯エキス顆粒(50)薬剤情報 – 白鷺病院薬剤部(PDF)
偽アルドステロン症および甘草含有漢方の注意事項について詳しい解説が掲載されています。
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