
シリンジポンプの操作は、新人看護師が最初に戸惑う医療機器の一つです。しかし、手順を体系的に理解すれば、安全に使用できます。
準備段階での確認ポイント。
シリンジセットの装着手順。
1. シリンジクランプを引き上げて回し、固定を解除
2. シリンジのフランジをスリットに確実に装着
3. シリンジを本体に押し付け、クラッチをつまんだままスライダーを押し子に密着させる位置まで移動
4. クラッチを離して固定し、クランプを回してシリンジを固定
設定と投与開始。
参考)シリンジポンプの接続方法
アラーム対応は、シリンジポンプ使用時に最も重要なスキルです。誤った対応は、薬剤の一気投与や脱血などの重大事故につながります。
参考)【シリンジポンプ】ポイント全て総まとめ!〜目的・使い方・交換…
閉塞アラームの対応手順:
閉塞アラームが鳴った場合、ライン内の圧力が高まっている状態です。よくある誤対応として、すぐに電源を切ったりクレンメを開放したりすることがありますが、これは危険です。
正しい対応ステップ。
1. まず停止・消音スイッチを押し、アラーム音を止める
2. 患者さんに一番近い部分にあるクレンメを閉じる
3. 高まった内圧を解除(以下の3方法のいずれか)
- シリンジポンプのスライダー解除:クラッチを外しスライダーを後方に引く
- 接続部を一度外して内圧解除
- 三方活栓を大気に開放して内圧解除
4. 閉塞の原因(クレンメの閉鎖忘れ、チューブのねじれ、三方活栓のロックなど)を確認・除去
参考)輸液ポンプとシリンジポンプの操作やアラーム対応について
5. クレンメを開放し、開始スイッチで送液を確認
気泡混入アラームの対応:
参考)https://www.wam.go.jp/wamappl/bb13gs40.nsf/0/2b0d54cd632552a849257103001f8890/$FILE/6-3-6~10.pdf
電圧低下アラームの対応:
サイフォニング現象は、シリンジポンプ使用中に起こりうる重大な事故の一つです。この現象を理解し、適切な防止策を講じることが、患者さんの安全につながります。
参考)シリンジポンプの使い方って、今更聞けなくない?!#新人ナース…
サイフォニング現象とは:
シリンジポンプが患者さんより高い位置に設置されている場合、高低差によって薬液が設定速度よりも早く流れてしまう現象です。重力による自然流下が発生し、ポンプの制御が効かなくなります。
発生条件。
防止策:
1. 設置位置の調整。
- シリンジポンプはできるだけ患者さんより低い位置で固定
- 点滴スタンドの脚の上にポンプが来るように設置し、転倒防止も兼ねる
参考)シリンジポンプの準備
2. 点滴スタンドの取り付け。
- スタンドの上から見て脚と垂直になるように取り付ける
- 安定性を確保し、思わぬ転倒を防ぐ
3. 投与開始前の確認。
- 設置高さの確認
- 全てのクレンメの状態確認
- チューブの取り回し確認
シリンジの交換は、特に微量投与薬剤(昇圧剤、カテコラミン、麻薬など)を使用中の場合、投与量の連続性が重要になります。適切な交換手順をマスターしましょう。
シリンジ交換の手順:
1. 準備。
- 新しいシリンジを用意
- 薬剤を充填し、シリンジポンプにセット
- 押し子とスライダーを密着させる
2. 交換タイミング。
- 残量が少なくなったら、次のシリンジを準備
- 現在のシリンジが空になる前に交換準備を完了
3. 交換作業。
- 現在の投与ラインをクレンメで閉じる
- 新しいシリンジをポップにセット
- プライミングを実施し、気泡を除去
- 積算量をクリアしてゼロに戻す
4. 接続。
- 新旧のシリンジを切り替え
- 投与ラインを開放
- 開始スイッチで投与再開
プライミングのコツ:
プライミングは、シリンジとチューブ内の気泡を除去し、薬液を先端まで満たす重要な作業です。
参考)https://ishinkai.or.jp/hospital/wp-content/uploads/2020/06/safety_news10-1-1.pdf
シリンジポンプの使い方において、あまり知られていない意外な視点が「医療機器安全管理」の観点です。これは臨床工学技士や医療安全管理室が重視するポイントで、新人看護師が知っていることで、事故防止に大きく貢献できます。
医療機器安全管理指針の要点:
厚生労働省の「医療機器安全管理指針」では、生命維持に関わる医療機器(シリンジポンプも該当)について、以下の管理が求められています。
参考)https://ja-ces.or.jp/ja-ces/ce/wp-content/uploads/2013/03/089a9b030c6a90b3045f15891d2d9fce.pdf
1. 日常点検。
- 各圧力計、気泡検出器等の全ての検知機能確認
- 警報機能が正常であることを確認
2. 定期点検。
- 装置の取扱説明書に従った定期メンテナンス
- 異常がないか確認
3. 使用時の確認。
- 投与薬剤、薬効、使用方法を熟知したスタッフと確認
- 指差し呼称での確認(特に「はじめて、ひさしぶり、変更」の3Hの時は注意レベルを上げる)
意外な事実:シリンジポンプは予定投与量の設定ができない
輸液ポンプとの大きな違いとして、シリンジポンプは「流量のみ」設定可能で、「予定投与量」の設定はできません。このため、薬剤の残量管理は使用者が手動で行う必要があります。
臨床工学科の活用:
院内には医療機器のプロフェッショナルである「臨床工学科」があります。機器の操作方法やトラブル対応で不安な場合は、相談することが推奨されています。
指差し呼称の重要性:
事故防止の3H(はじめて、ひさしぶり、変更)の時は、注意のレベルを上げ、指差し呼称で確認することが推奨されています。これにより、設定ミスや操作ミスを大幅に減少できます。
シリンジポンプの操作 | 動画でわかる看護技術
シリンジポンプの操作手順やコツを動画で解説。微量かつ高濃度の薬液投与の方法がわかります。
はじめてのシリンジポンプ!
新人看護師向けにシリンジポンプの使い方を説明。外装確認から電源接続、シリンジセット、流量設定、開始までを詳細に解説しています。
【トラブル解決】シリンジポンプの使い方完全ガイド
基本操作から7つのトラブル対処法まで解説。サイフォニング現象の予防策、アラーム対応、プライミングのコツなど、現場で役立つ知識が満載です。
医療機器安全管理指針第1版
厚生労働省の医療機器安全管理指針。生命維持に関わる医療機器の管理方法が記載されています。
シリンジ装着時の注意 - 日本医師会
シリンジポンプ使用時の注意点や安全対策について、日本医師会が作成した資料です。
患者さんの状態に大きく影響するシリンジポンプの使い方を、サイフォニング現象の防止策や早送りの方法とともに解説しています。
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