脳血管障害が目に現れる症状は、単なる「目の疲れ」や「老眼」とは性質が全く異なります。脳卒中を含む脳血管障害では、視覚経路のどの部位が損傷されたかによって、特徴的な目の症状が現れます。
特に注意すべきは、これらの症状が一時的に改善しても「治った」と自己判断しないことです。一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。TIAは脳梗塞の「警告サイン」であり、放置すると数日以内に本格的な脳梗塞に移行するリスクが極めて高いからです。
参考)TIAシリーズ ①目と脳のつながり|一之瀬脳神経外科病院

一過性黒内障(いっかせいこくないしょう)は、脳血管障害が目に現れる最も典型的な前兆症状の一つです。この症状は「片目だけが突然見えなくなる」という特徴的な現れ方をします。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=67
患者さんの多くは「視界にカーテンが下りた」「霧がかかったように白っぽくなった」「灰色になって見えなくなった」と表現します。この状態は数分から数十分続き、その後自然に元に戻ります。痛みを伴わないため、緊急性に気づかないケースが少なくありません。
参考)http://inh.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/03/P9-TIA.pdf
重要な点は、この症状が「目の病気」ではなく「脳の血管の問題」であることです。眼動脈が詰まることで起こりますが、この眼動脈は内頚動脈から分岐する最初の血管です。つまり、心臓や頚動脈から血栓が飛んできて、最初に眼動脈に引っかかったに過ぎません。もし血栓がもう少し脳側へ流れていれば、脳梗塞を発症していた可能性が高いのです。
参考)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障??|かまくら脳神経…
一過性黒内障を経験した人の約15〜20%が3ヶ月以内に脳梗塞を発症し、その半数は数日以内、早い人で48時間以内に発症します。「また同じ症状が出たから大丈夫」と繰り返す場合も、TIAが反復している状態であり、極めて危険な状況です。速やかに脳神経外科や脳卒中専門医を受診し、内頚動脈の狭窄や心臓の血栓形成疾患がないか精密検査を受ける必要があります。
参考)https://www.kanden-hsp.jp/files/introduction/hsp_chg/hsp_chg02/5/12_5.pdf
脳血管障害による視野欠損で最も特徴的なのが「同名半盲(どうめいはんもう)」です。これは両眼の同じ側の視野が欠ける状態で、例えば右後頭葉に脳梗塞が生じると、両眼ともに左側の視野が見えなくなります。
視野欠損は、視覚情報が網膜から脳へ伝わる経路(視覚経路)のどの部位が損傷されたかによって、パターンが異なります。
参考)視覚はどこまで脳でつくられる?血管支配から見える視覚障害|p…
視野欠損がある患者さんは、日常生活で「文字の左側が見えない」「食器の左側の食べ物を残してしまう」「ぶつかることが多い」といった困難を抱えます。しかし、脳卒中の急性期では視野障害自体に自覚がない場合も多く、周囲の家族や医療者が気づくケースが少なくありません。
参考)脳梗塞の後遺症で起きる目(視界)の症状を解説 - ハート脳梗…
物が二重に見える「複視」も、脳血管障害が目に現れる重要な症状です。複視には「片眼性複視」と「両眼性複視」の2種類があり、脳血管障害に関連するのは主に後者です。
両眼性複視は、両目で見ると二重に見えるが、片目を閉じると二重見えが消失する特徴があります。これは眼球を動かす筋肉や神経、あるいは脳幹にある眼球運動中枢の障害によって起こります。
脳血管障害による複視は、特に脳幹の脳梗塞や脳出血で現れやすい症状です。脳幹には「内側縦束」という眼球運動を制御する中枢があり、ここを病変が巻き込むと複視が生じます。 椎骨脳底動脈系のTIAでは、めまい、複視、嚥下障害、構音障害などが現れますが、これらは単独ではTIAと診断できないとされています。
複視に加えて「眼振(眼球が不規則に揺れる)」「眼瞼下垂(まぶたが下がる)」「瞳孔不同」などの症状を伴う場合、脳幹や小脳の血管障害が強く疑われます。これらは単なる「疲れ目」とは全く異なる緊急性の高いサインです。
また、複視が「突然現れた」「横方向に物が二重に見える」「めまいやふらつきを伴う」という特徴がある場合、脳血管障害の可能性を強く疑い、速やかにMRI検査を受けるべきです。
脳血管障害による目の症状で、あまり知られていないのが「視覚探索能力の低下」と「視覚注意機能の障害」です。これは視野が物理的に欠損していなくても、脳の高次視覚機能が障害されることで現れる症状です。
特に前頭葉から頭頂葉にかけての領域(前頭-頭頂前部、ACA領域)の血管障害では、視覚情報の「注意・探索・眼球運動の制御」に関わる機能が低下します。患者さんは以下のような困難を経験します。
これらの症状は、 visão検査では「正常」と判定されるため、見過ごされやすいのが問題です。 しかし、日常生活では「冷蔵庫の中身が見つけられない」「文章の左側を読み飛ばす」「人混みでぶつかる」といった困難が現れ、QOL(生活の質)に大きな影響を与えます。
リハビリテーションでは、視覚走査訓練(Visual Scanning Training)や眼球運動トレーニング、視覚注意誘導訓練などが有効とされています。 脳血管障害の急性期から、これらの高次視覚機能の評価と介入を早期に開始することが、その後の生活機能の回復に大きく影響します。
脳血管障害が目に現れる症状を経験した場合、以下の基準で受診の緊急性を判断してください。
参考)脳卒中の前兆TIAの症状|消えても危険な脳の警告サイン -
すぐに受診すべき症状(緊急度:高)
一過性黒内障やTIAは、症状が消失しても「脳梗塞のリスクが極めて高い状態」です。症状が治まったからといって放置せず、24時間以内に専門医を受診することが、本格的な脳梗塞の発症を防ぐために最も重要です。
参考リンク:脳の病気が目に現れる典型的な症状について詳しく解説
目の症状で、脳神経の病気を早期発見
参考リンク:一過性脳虚血発作(TIA)の症状と受診の重要性
一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障??|かまくら脳神経…
参考リンク:網膜動脈閉塞症を含む眼科救急疾患の症状と対応
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=67
参考リンク:脳卒中による視野障害のメカニズムとリハビリテーション
脳梗塞の後遺症で起きる目(視界)の症状を解説 - ハート脳梗…
参考リンク:視覚経路と脳血管障害の関係性について
視覚はどこまで脳でつくられる?血管支配から見える視覚障害|p…
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