メトホルミンを使う患者に、造影剤検査の予定があっても普段どおり内服させても問題ないと思っていませんか。実はヨード造影剤との併用は一定の条件下で乳酸アシドーシスの発症リスクを高め、休薬期限を守らないと重篤な転帰につながる例が報告されています。
参考)https://www.radiology.jp/content/files/688.pdf

メトホルミンはビグアナイド系に分類される経口血糖降下薬です。肝臓での糖新生を抑え、筋肉での糖の取り込みを促すことで血糖値を下げます。インスリンの分泌を増やすタイプの薬とは仕組みが異なります。
つまり「インスリンを出す薬」ではなく「体の糖の使い方を変える薬」ということですね。この違いを理解しておくと、低血糖リスクが比較的低い理由も説明しやすくなります。
商品名としては「メトグルコ」「グリコラン」などが有名で、メトホルミン塩酸塩として複数のジェネリック医薬品も流通しています。処方箋を見た際に成分名と商品名が一致しているか、薬歴システムで確認する習慣をつけると取り違えを防げます。
主な適応は2型糖尿病ですが、それだけではありません。インスリン抵抗性を伴う多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療にも用いられており、婦人科領域でも処方される場面があります。
これは意外ですね。糖尿病薬というイメージが強いため、婦人科での処方歴を見落として重複投与のチェックが漏れることがあります。
さらに近年は肥満治療や抗老化研究の文脈でも注目されており、適応外使用の相談を受けるケースも増えています。適応外処方の場合は保険適用外になる点を患者に説明できるよう、院内の説明用資料を一枚用意しておくと対応がスムーズです。
参考)メトホルミンの効果を医師が解説—痩せる?食欲抑制・血糖値・ア…
最大の注意点は乳酸アシドーシスです。腎機能が低下した状態でメトホルミンが体内に蓄積すると、乳酸の分解が滞り血液が酸性に傾きます。
参考)メトホルミンで乳酸アシドーシスはなぜ起こる?リスク因子と服薬…
厚生労働省の適正使用に関するRecommendationでは、腎機能・肝機能障害、心血管系・呼吸機能障害、脱水、大量飲酒などのある患者への投与を特に注意すべきとしています。高齢者や急性疾患時の脱水も見逃しやすいポイントです。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000514022.pdf
発症頻度は決して高くありませんが、死亡例も報告されている警告事項です。重篤化してからでは打つ手が限られるため、初期の腎機能評価が原則です。
参考)https://med.daiichisankyo-ep.co.jp/products/files/1159/20190628175218_7989_upd_oth_mtrl_1_pdf.pdf
ヨード造影剤を使う検査を控えた患者では、休薬タイミングの管理が欠かせません。eGFRが低下している患者に造影剤とメトホルミンを併用すると、急性腎障害を介して乳酸アシドーシスのリスクが跳ね上がるとされています。
参考)造影CT検査を受ける時の糖尿病薬の注意点|ビグアナイド薬の一…
一般的な運用では検査前後で一定期間の休薬と、再開前の腎機能再評価が求められます。この休薬ルールを院内マニュアルに落とし込み、電子カルテのアラート機能に登録しておくと、うっかり継続投与を防ぐ助けになります。
「造影剤検査=いったん休薬確認」が基本です。検査予約が入った時点でアラートが出る仕組みがあれば、これは使えそうです。
メトホルミンは腎排泄型の薬であるため、腎機能に影響する薬剤との併用時は特に注意が必要です。利尿薬やNSAIDsなど脱水や腎機能低下を招きやすい薬との組み合わせは、リスクを重ねてしまう可能性があります。
多剤併用中の高齢患者では、これらの薬剤リストを定期的に見直すことが重要です。単剤ごとのリスクは低くても、組み合わせで乳酸アシドーシスのリスクが上がることがあるためです。
薬剤師によるポリファーマシーチェックを定期的に挟む運用が、リスク回避の助けになります。
メトホルミンの適正使用に関する厚生労働省の推奨事項(腎機能・脱水などのリスク因子を詳述)
ビグアナイド薬と乳酸アシドーシスの機序・禁忌条件のまとめ

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