光線過敏症の説明を省略した代替薬変更で、患者トラブルが実際に起きています。

ケトプロフェンパップの販売中止は、一つのメーカーだけの話ではありません。
三和化学研究所は2020年7月にケトプロフェンパップ60mg「三和」(140枚包装)の販売中止を告知し、同年10月に供給終了となりました。 その後も複数のメーカーが順次販売中止を決定しており、ラクール薬品販売は2024年7月26日にケトプロフェンパップ60mg「ラクール」について2024年12月を目途に販売を中止する旨を告知しています。
参考)http://www.rakool.co.jp/upload/1721954485append.pdf
販売中止の公式理由はいずれも「諸般の事情」と記載されており、具体的な内訳は非公表とされています。 背景には、後発品市場の収益性悪化や製造コストの上昇、他社品の販売中止に伴う需要集中などが複合的に絡んでいます。実際にラクール薬品販売の別製品では「他社品の販売中止による需要増加のため」と需要増加が限定出荷の理由として挙げられています。
参考)https://med.skk-net.com/information/item/KTPP2007i.pdf
日医工でも2023年11月にケトプロフェンパップ30mg「日医工」の限定出荷を告知し、安定供給が困難な状況が続きました。 つまり、特定品目の販売中止が玉突き式に他メーカーの供給ひっ迫を招く構造になっており、医療機関・薬局ともに在庫管理と代替対応の両面で対応を迫られています。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/40510/information/20231129cI4.pdf
| メーカー・製品名 | 販売中止時期 | 経過措置終了 |
|---|---|---|
| ケトプロフェンパップ60mg「三和」(140枚) | 2020年10月 | 2022年3月末 |
| ケトプロフェンパップ60mg「ラクール」 | 2024年12月頃 | 2025年3月予定 |
| ケトプロフェンパップ30mg「ラクール」一部包装 | 在庫消尽次第 | 未定 |
光線過敏症のリスクは、ケトプロフェンパップを巡る議論の核心部分です。
PMDAは以前から、ケトプロフェン外用剤について「使用後数日を経過してから、長い場合には数ヶ月を経過してから接触皮膚炎・光線過敏症等の副作用を発現した症例」が報告されていると注意喚起しています。 欧州ではこの問題が特に深刻で、サンスクリーン製品に含まれる成分「オクトクリレン」との共感作によって光線過敏症リスクがさらに高まることが報告されており、医療専門職による管理が必要として医療用に限定されています。
参考)https://www.yakuji.co.jp/entry20848.html
重要なのは、このリスクが「貼付中のみ」に限らない点です。つまりです。パップ剤を剥がした後でも、残存するケトプロフェンが皮膚に留まり、紫外線によって光線過敏症が誘発される可能性があります。 医療従事者がこの事実を患者に伝えなければ、患者は「剥がしたから大丈夫」と外出し、皮膚炎を発症するリスクがあります。
参考)(参考)医薬品・医療用具等安全性情報173号(報道発表資料)…
販売中止に伴い代替薬へ切り替える際、この光線過敏症に関する注意事項の「変化」をどう患者に説明するかが、クレーム回避の分岐点になります。ロキソプロフェンパップやジクロフェナクパップは、ケトプロフェンと比較して光線過敏症の発現リスクが低いとされており、代替後に「以前の薬より安全になった」という誤解を生まないよう、正確な情報提供が必要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/276-1.pdf
代替薬は複数ありますが、選択基準は「成分の特性」と「患者背景」の両方で判断するのが原則です。
現在も供給継続中の選択肢として、帝國製薬のケトプロフェンパップXR120mg「テイコク」(薬価17.6円/枚)があります。 ケトプロフェン成分を継続したい場合の第一選択肢となりえますが、規格が異なるため、投与量・貼付方法の変更が必要かどうか確認が必要です。これが条件です。
参考)医療用医薬品 : ケトプロフェン (ケトプロフェンパップXR…
同一有効成分・規格違いの製品が存在する場合は、まず同一有効成分での代替を検討するのが自然な順序です。 他成分への切り替えを検討する場合、主な選択肢は以下の通りです。
意外ですね。代替薬への切り替えが、患者にとって副作用リスクの「増減」どちらにもなりうるのです。患者の皮膚状態・既往歴・日常の日光曝露量などを考慮した個別対応が求められます。
「在庫がなくなってから対応」では遅すぎます。これが問題です。
販売中止の告知から経過措置期間終了まで、多くの場合3〜6ヶ月程度の猶予があります。 この期間中に代替薬の選定・採用申請・スタッフへの情報共有・患者への事前説明を済ませておくことが、混乱を避けるための最短ルートです。特に経過措置期間は保険請求が可能な最終期限であり、終了後は処方・調剤ともに不可となるため、期日管理が重要です。
参考)https://med.kissei.co.jp/information/info048.pdf
在庫管理の観点では、販売中止品の残在庫を経過措置期間内に使い切る計画を立てる必要があります。余剰在庫を抱えた状態で経過措置が終了すると、廃棄処分のコストが発生します。東京都内の薬局では廃棄損が年間数万円規模になるケースもあるとされており、計画的な発注停止が求められます。
患者への説明では「変更の理由」と「新薬との違い」の2点を明確に伝えることが、クレーム防止の基本です。「薬が変わりましたが、効果・使い方・注意点はこう変わります」という具体的な説明が、患者の不安解消と信頼維持につながります。特に長期処方患者には、定期受診・調剤のタイミングで早めに変更を告知しておくことが重要です。
DSJP(医療用医薬品供給状況データベース):ケトプロフェンパップを含む後発品の供給状況をリアルタイムで確認できる医療従事者向けデータベース
今回の販売中止ラッシュは、個別メーカーの問題ではありません。
後発品(ジェネリック医薬品)市場では、薬価の引き下げ圧力が強まる中、低収益品目の製造継続が困難になるケースが増えています。 ケトプロフェンパップも例外ではなく、複数のメーカーが「諸般の事情」として販売を終了しています。こうした玉突き的な中止は、残存メーカーへの需要集中 → 供給ひっ迫 → 限定出荷 → 新たな代替探しという連鎖を生みます。
参考)http://www.medicine.co.jp/upload/1739870723append.pdf
厚生労働省も後発品の安定供給問題を重要課題として位置づけており、製造能力の把握と供給情報の透明化が求められています。医療機関・薬局側でできる対策としては、1種類の後発品に依存しない複数メーカー採用、供給状況情報の定期チェック、そして代替品リストの事前整備が挙げられます。
つまり、今回のケトプロフェンパップ問題を「この品目だけの問題」として処理するのは危険です。同様の構造は他のNSAIDs外用剤にも存在しており、医療機関・薬局がDJSP等のデータベースを活用して供給状況を継続的にモニタリングする体制を整えることが、患者への安定的な薬剤供給を守るための最重要ステップです。
参考)供給状況に関するお知らせ|重要なお知らせ|三和化学研究所
PMDA 医薬品・医療用具等安全性情報173号:ケトプロフェン外用剤の光線過敏症・接触皮膚炎に関する注意喚起の公式情報源
| 薬剤・分類 | 主なリスク |
|---|---|
| エプレレノン(慢性心不全適応)・フィネレノン | 高カリウム血症 |
| 塩化カリウム・グルコン酸カリウムなどのカリウム製剤 | 高カリウム血症(相加) |
| スピロノラクトン・トリアムテレン(カリウム保持性利尿剤) | 高カリウム血症 |
| 炭酸リチウム | 甲状腺機能低下・甲状腺腫(相加) |
| チアマゾール・プロピルチオウラシル(抗甲状腺薬) | 甲状腺機能低下(相加) |
| ACE阻害剤・ARB・アリスキレン | 高カリウム血症 |