
景観条例に基づく届出制度は、地域全体の景観を良好に保つために設けられた仕組みです。 届出が必要となる行為は、主に建築物の建築等、工作物の建設等、開発行為の三つに大別されます。 それぞれの行為には、対象となる規模基準が細かく定められており、地域や自治体によって若干の違いがあります。
参考)景観法に基づく届出制度 - 建設部まちづくり局都市計画課
建築物の新築・増築・改築・移転については、高さが10メートルを超えるもの、または建築面積が1,000平方メートルを超えるものが届出対象となります。 ただし、一戸建ての住宅であっても、高さが20メートルを超える場合は届出が必要です。 延べ床面積が5,000平方メートルを超える大規模建築物については、特に厳格な審査基準が適用されるケースが多く見られます。
参考)景観計画区域内の行為の届出について(景観法第16条関連) -…
工作物の新設等については、種類ごとに異なる基準が設けられています。 さく・塀・垣(生け垣を除く)・擁壁等は高さ5メートルを超えるもの、煙突・排気塔・記念塔・電波塔・物見塔・高架水槽・冷却塔・広告塔・広告板等は高さ10メートルを超えるものが届出対象です。 鉄筋コンクリート柱・鉄柱・木柱等は高さ15メートルを超えるもの、観覧車・飛行塔・コースターなどの遊戯施設は高さ10メートルを超えるもの、または築造面積が1,000平方メートルを超えるものが対象となります。
参考)景観法に基づく届出(一定規模以上の建築物等)|宇都宮市公式W…
開発行為については、都市計画法第4条第12項に規定される開発行為で、かつ当該行為の土地の区域の面積が10,000平方メートル(1ヘクタール)を超えるものが届出対象です。 地域によっては、より小規模な500平方メートル以上から届出が必要となる場合があります。 土石の堆積等についても、造成面積が500平方メートル以上であれば届出が必要となる自治体があります。
参考)景観法に基づく届出制度
外観を変更することとなる修繕・模様替え・色彩の変更については、変更の範囲が建築物及び工作物の各立面において1/2(50%)を超えるものが届出対象となります。 既存色の塗り直しであっても、立面の1/2を超える範囲であれば届出が必要です。 マンションの外壁修繕や塗り替え工事を行う際は、この基準に注意して判断する必要があります。
| 行為の種類 | 届出対象規模 |
|---|---|
| 建築物の新築・増築・改築・移転 | 高さ10m超または建築面積1,000㎡超 |
| 工作物の新設・増築・改築・移転(塀・擁壁等) | 高さ5m超 |
| 工作物の新設・増築・改築・移転(煙突・広告塔等) | 高さ10m超 |
| 開発行為 | 面積10,000㎡(1ha)超 |
| 外観修繕・色彩変更 | 立面の1/2(50%)超 |
景観条例に基づく届出は、原則として行為の着手の30日前までに提出する必要があります。 これは、届出が受理された日から30日を経過しなければ、届出に係る行為に着手してはならないという規定によるものです。 建築確認申請や特定行政庁への許可・認定申請の手続きと連動している場合、これら関係法令に基づく手続きを行う日の内で一番早い日までに届出を行う必要があります。
参考)景観法に基づく行為の届出の流れと必要な書類|名古屋市公式ウェ…
事前相談については、届出の60日前までに実施することが推奨されています。 特に特定大規模建築物等の場合は150日前までに事前相談の届出が必要です。 事前相談を適切に行うことで、必要な書類の確認や景観形成基準への適合チェックがスムーズに進み、後々の手戻りを防ぐことができます。
参考)東京都景観条例に基づく届出または事前協議の提出及び関係様式等
変更届については、当初の行為の届出から設計又は施工方法の変更を要することとなった場合、工事着手の30日前までに変更届を提出する必要があります。 設計変更が生じた場合は、速やかに変更届を提出することで、違反リスクを回避できます。
完了報告については、工事完了後2週間以内に提出が必要です。 報告書には、当該報告書に係る行為が完了した後の状況を示す写真、撮影位置及び方向を図示した図面の添付が求められます。 電子メールによる提出も可能な自治体があり、デジタル化が進んでいます。
令和3年4月1日より届出方法等が変更となり、届出書の押印・自署が廃止されました。 提出部数も2部から1部に変更され、電子での提出方法も追加されています。 委任状の取り扱いも変更となっているため、最新の情報を確認することが重要です。
届出に必要となる書類は、自治体によって若干の違いがありますが、以下に示す書類が一般的です。 各書類は、原則として各2部、A4サイズより大きい場合はA4サイズに折って提出します。 A4版紙ファイルでの窓口提出が基本で、A3判はZ折にして、表紙・背表紙に件名等を表示します。
届出書は、各自治体で用意されている「景観法に基づく行為の届出の様式」からダウンロードして使用します。 押印は不要で、自署も廃止されています。 景観配慮事項説明書も同様に、各自治体の様式からダウンロードして作成します。 提出書類は必ず事前相談を行い、提出書類を確認のうえ準備しましょう。
現況写真として、敷地及び周辺状況(隣接建築物など)が把握できるカラー写真を数枚添付します。 位置図は敷地の位置及び敷地の周辺の状況がわかるもの、配置図は敷地の境界及び敷地内における建築物・工作物の位置がわかるものを準備します。 配置図には、外構仕上げ(植栽、舗装、塀・フェンス、附属施設等)を記入し、隣接建築物の位置も記入する必要があります。
平面図は、建築物の場合は各階の間取り及び用途を記入し、各階の床面積を表示するか、面積表を添付します。 屋根伏図も添付が必要です。 工作物の場合は、主要部分の材料の種別を記入し、各部分の大きさがわかる寸法等を記入します。 立面図は4面の立面図を添付し、2面以上は着色します。 完成予想図が添付できない場合は4面着色が必要です。 仕上げ方法を記入するか、仕上げ表を添付し、色彩はマンセル値を記入して色見本や写真を貼り付けるなど実際の色がわかるよう明示します。
完成予想図(パース)は、建築物・工作物及びその周辺状況を示す着色のものを添付します。 太陽電池・風力発電設備景観形成配慮事項チェックリストの提出を求める自治体もあります。 住民説明会を実施した場合は、その開催状況がわかる資料(議事録等)を任意様式で添付します。
オンラインによる申請も可能としている自治体が増えています。 届出に関する問い合わせは、届出行為地を所管する各広域本部窓口へ連絡します。 電子メールによる完了報告も可能な自治体があり、デジタル化が進んでいます。
参考)景観法又は景観条例に基づく届出 - 熊本県ホームページ
景観条例に基づく届出を怠った場合、または虚偽の届出を行った場合には、罰則が科される可能性があります。 建築物・工作物の未届出や虚偽の届出などに対しては、罰則が設けられています。 景観行政団体の長の命令に違反した者は、50万円以下の罰則が科される可能性があります。
参考)https://www.pref.kagoshima.jp/ac06/kurashi-kankyo/chiiki/keisei/torikumi/documents/01-4daisansyou-06.pdf
変更命令に違反した場合も、法第101条第1項により罰則の対象となります。 未届出で工事を開始した場合、工事の停止を命じられるだけでなく、原状回復を命じられるケースもあります。 これらの違反は、事業者の信用失墜につながるだけでなく、プロジェクトの遅延や追加コストの原因ともなります。
参考)https://www.mlit.go.jp/crd/townscape/keikan/pdf/keikanhou-gaiyou050901.pdf
違反事例として、以下のようなケースが報告されています。
リスク管理の観点からは、以下の対応が重要です。
compliance(法令遵守)体制の構築が、事業者には求められています。 内部チェック体制を整え、複数人で確認を行うことで、人為的なミスを防ぐことができます。 定期的な社内研修や、最新の法令改正情報のキャッチアップも重要です。
参考)https://www.townhamanaka.jp/kakuka/juuminkankyouka/kankyouseisaku/files/tebiki.pdf
景観条例の届出制度は、単なる規制ではなく、地域の特性を活かした景観形成を目的としています。 各自治体は、地区区分を設定し、景観基本軸、景観形成特別地区及び一般地域において、それぞれ良好な景観の形成に関する方針や行為の制限に関する事項(景観形成基準)を定めています。 この地区区分は、地域の歴史・文化・自然環境などの特性を踏まえて設定されており、一律の基準ではなく、地域に応じたきめ細かい対応が可能となっています。
参考)届出制度による景観形成
例えば、調布市では深大寺通り周辺景観形成重点地区、国分寺崖線景観形成重点地区、景観形成推進地区一般地域の三つの地区区分が設けられています。 深大寺通り周辺景観形成重点地区では、全ての行為が届出対象となり、より厳格な景観形成基準が適用されます。 国分寺崖線景観形成重点地区では、建築物の高さが10メートル以上または延べ面積が500平方メートル以上、工作物の新築等が全ての規模で届出対象となります。 景観形成推進地区一般地域では、高さが20メートル以上または延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物が対象となります。
北海道では、北海道全域が景観計画区域に指定されており、一般区域と羊蹄山麓広域景観形成推進地域(蘭越町、ニセコ町、真狩村、留寿都村、喜茂別町、京極町、倶知安町)に区分されています。 羊蹄山麓広域景観形成推進地域では、特に景観形成の観点から配慮が求められ、太陽電池・風力発電設備景観形成配慮事項チェックリストの提出が求められます。 これは、自然景観と再生可能エネルギー設備の調和を図るための独自の取り組みです。
小笠原(父島二見港周辺)景観形成特別地区では、東京都小笠原支庁土木課住宅担当が窓口となり、島嶼部という特殊な地理的条件を踏まえた景観形成が行われています。 離島では、建築資材の調達や施工業者の確保が困難な場合があり、これらの実情を踏まえた柔軟な対応が求められます。
歴史的町並みを保全する地区では、建築基準法に加えて、より厳格な景観形成基準が適用される場合があります。 伝統的建造物群保存地区や歴史的風致形成特別地区では、単なる色彩や外観の規制だけでなく、建築様式や屋根の形状、塀や門のデザインなど、細部にわたる景観形成基準が定められています。 これらの地域では、地域住民との事前協議や住民説明会の開催が事実上必須となるケースが多く、地域コミュニティとの良好な関係構築がプロジェクト成功の鍵となります。
参考リンク:国土交通省 「景観法の概要」PDF 景観法に基づく届出制度の全体の仕組みや法的位置づけが記載されています
参考リンク:福島県 「景観法及び福島県景観条例に基づく届出の手引き」PDF 届出の手続きや必要書類の記入例が詳しく記載されており、実務に活用できます
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