実は「意識不明の重体」という言葉は、現場で使うと同僚医師から必ず聞き返されます。

正しい医学用語は「意識障害」です。 重要なのは「意識があるかないか」の二択ではなく、「どの程度意識が障害されているか」を段階的に表現することです。 この区別をあいまいにしたまま患者情報を伝えると、後続スタッフが適切な処置を判断できなくなる危険があります。
参考)「意識不明の重体」「全治3ヶ月」の意味、医師が絶対に使わない…
そこが核心です。「意識不明」という一言では情報量がゼロに等しい、と医療者は感じます。
一方、国際的な Glasgow Coma Scale(GCS)は開眼(E)・言語(V)・運動(M)の3項目を点数化し、合計15点が正常、8点以下が重症と判断されます。 記録は「E1 V1 M3 合計5点」のように各項目を明記するのが原則で、合計点だけを報告する習慣は避けましょう。
参考)GCS (グラスゴー・コーマ・スケール)【ナース専科】
| スケール | 評価軸 | 正常 | 重症の目安 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|---|
| JCS(ジャパン・コーマ・スケール) | 覚醒度・開眼 | 0(清明) | 100以上(3桁) | 日本国内・救急搬送時 |
| GCS(グラスゴー・コーマ・スケール) | 開眼・言語・運動(3項目) | 15点 | 8点以下 | 国際的・脳神経外科・ICU |
経時変化の記録が治療の命綱です。
医療従事者向けの具体的なJCS一覧については、以下の資料が参考になります。JCS各桁・各点数の定義を図表でわかりやすくまとめています。
意識レベルの評価(日本救急看護学会) — JCS・GCSの各段階の定義と評価手順をわかりやすく解説
一般報道では「重体」「重傷」「重症」「心肺停止」が混在して使われます。整理すると下記のとおりです。
参考)心肺停止と意識不明の重体と死亡の違いを教えてください - 心…
「重体」は医学用語として存在しません。 病状は一本の評価軸で軽重を二分できるほど単純ではなく、バイタルサイン全体を個別に評価する必要があるためです。
患者家族から「重体ですか?」と聞かれても、「重体」という医学的定義はないということですね。GCSやJCS、血圧・呼吸の数値で具体的に説明する方が患者・家族にとっても理解しやすく、後のトラブル防止にもつながります。
「重傷」と「重体」何がどう違う?(DIME) — 一般向けに「重傷・重体・重症・心肺停止」の違いを解説。患者家族への説明に役立つ
これが盲点です。
バイタルサインは「意識レベル・呼吸状態(SpO₂)・血圧・脈拍・体温」の5項目です。 ICU入室患者を対象とした研究(NEJM 2013年)では、退院後3カ月時点で患者の40%に中等度外傷性脳損傷と同程度の認知機能障害が確認されており、12カ月後も34%で持続していました。 意識レベルが回復したように見えても、高次脳機能に後遺障害が残るケースが決して少なくないことを、現場は念頭に置く必要があります。
参考)https://www.nejm.jp/abstract/vol369.p1306
意識レベルだけで安心するのが最も危険なパターンです。特に「意識は戻ったが会話が噛み合わない」「記憶が断片的」といったサインを見逃さないことが、早期リハビリ介入と転帰改善につながります。意識障害後の高次脳機能評価については、標準化されたアセスメントツール(MMSE・MoCAなど)の活用も検討しましょう。
重症疾患後の長期認知機能障害(NEJM日本版) — ICU生存者の40%が退院後3か月で認知機能障害を呈するというエビデンス
Yahoo!知恵袋などのQ&Aサービスには「意識不明の重体とはどういう状態か」「脳死と何が違うのか」「生存率はどのくらいか」という質問が多数投稿されています。 これらの疑問は、患者家族が病院で十分な説明を受けられていないことを示唆しています。
参考)意識不明の重体というのはどういう状態になられているということ…
実際、「意識不明の重体という言葉の意味を検索で調べた」という患者家族は少なくありません。インターネットで得た情報と病院側の説明にズレが生じると、不信感や医療不信につながります。
説明不足がクレームを生みます。
医療従事者側でできる具体的な対策は2点です。
意識障害の原因や救急対応の流れについて、患者家族への説明にも使える権威ある解説が以下にあります。
意識不明の重体(あずき法律事務所) — 交通事故後に意識不明の重体となった場合の医学的説明と家族が取るべき行動を解説
交通事故で意識不明の重体になった場合の後遺障害(メディカルコンサルティング) — 6時間以上の意識消失と高次脳機能障害・植物状態のリスクを解説
| 症状 | 医学的意味 |
|---|---|
| 38℃以上の発熱が続く | 全身性の菌血症・敗血症の可能性 webview.isho |
| 患部が急速に拡大する | 蜂窩織炎(ほうかしきえん)へ移行している webview.isho |
| 眼球周囲の腫れ・眼痛・複視 | 眼窩蜂窩織炎または海綿静脈洞血栓症の初期症状 msdmanuals |
| 激しい頭痛・首のこわばり | 髄膜炎を示唆する所見 webview.isho |
| 視力の低下や失明感 | 海綿静脈洞血栓症による神経障害 akaike-clinic |
| 患部に拍動性の強い自発痛 | 膿瘍形成のサイン。排膿処置の適応を検討 webview.isho |