「ヒルドイドソフト軟膏を処方したつもりが、一般名処方で別剤形が調剤されてクレームになった」という事例が全国で発生しています。

ヘパリン類似物質には軟膏・クリーム・ローション・外用液と多彩な剤形がありますが、その中でも最も混乱を招くのが「一般名:ヘパリン類似物質軟膏」の剤形区分です。
参考)ヒルドイドソフト軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの基剤【フ…
結論から言うと、これです。
| 一般名(般名処方) | 先発品名 | 後発品の剤形分類 | 基剤タイプ |
|---|---|---|---|
| 【般】ヘパリン類似物質軟膏 | ヒルドイドソフト軟膏 0.3% | 油性クリーム(W/O型) | 油中水型 |
| 【般】ヘパリン類似物質クリーム | ヒルドイドクリーム 0.3% | クリーム(O/W型) | 水中油型 |
「ソフト軟膏」という商品名はマルホ株式会社が独自につけた名称で、実際の剤形は油中水型クリーム(W/O型)です。 後発品はこれを正確に表すため「油性クリーム」という名称を使っています。つまり一般名と後発品の剤形表記が対応しているものの、一般名の「軟膏」という文字だけを読んで「軟膏剤(チューブ入り白色ワセリン系)」と誤解すると、全く異なる製剤を選んでしまいます。
この基剤の違いは治療成績にも影響します。 油中水型(W/O型)のヒルドイドソフト軟膏系は被膜性が高く保湿効果が持続しやすい一方、水中油型(O/W型)のヒルドイドクリーム系はのびが良く使用感が軽いという特徴があります。 患者の皮膚状態や生活習慣に合わせて剤形を選択することが治療効果の最大化につながります。これは剤形選択の基本です。
ファーマシスタ:ヒルドイドソフト軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの基剤の違いを詳解
医療機関・薬局双方で必要な一般名コードと薬価の知識を整理します。
参考)https://med.nipro.co.jp/ph_product_detail?id=a0A1000001H1jZXEAZ
| 剤形 | 一般名処方の標準記載 | 一般名コード | 後発品薬価(1g) | 先発品薬価(1g) |
|---|---|---|---|---|
| 油性クリーム(W/O型) | 【般】ヘパリン類似物質軟膏 0.3% | 3339950M1ZZZ | 約3.00〜6.30円 | 17.70〜18.20円(ヒルドイドソフト軟膏) |
| クリーム(O/W型) | 【般】ヘパリン類似物質クリーム 0.3% | 別コード | 後発各種 | ヒルドイドクリーム |
先発品と後発品の薬価差は大きく、ヒルドイドソフト軟膏 0.3%(先発)は1gあたり約17.70〜18.20円に対して、後発品は3.00〜6.30円程度です。 差額は1gあたり最大15円以上。100g処方で約1,500円以上の差になります。これは患者の窓口負担に直結します。 後発品への切り替えを促進することが医療費適正化の観点からも重要な取り組みです。
一般名処方マスタの正確な理解は、薬局業務のミス防止に不可欠です。
KEGG MEDICUS:ヘパリン類似物質の医薬品情報・薬価・収載コード一覧
ヘパリン類似物質の有効成分は「ヘパリン類似物質(Heparinoid)」で、肝臓で生成されるヘパリンに似た構造を持つ多糖類です。 「ヘパ」はラテン語で「肝臓」を意味し、ヘパリン自体は強力な抗凝固作用を持ちますが、外用のヘパリン類似物質はその副作用を抑えながら以下の3つの薬理作用を発揮します。
参考)保湿剤「ヒルドイド(ヘパリン類似物質)」塗り薬 - 巣鴨千石…
これら3作用の複合効果が、他の保湿剤にはないヘパリン類似物質の特徴です。 単純な保湿剤(ワセリン、ヒアルロン酸など)が水分保持のみを担うのに対し、血行促進と抗炎症が加わることで、乾燥肌・老人性皮膚掻痒症・進行性指掌角皮症など幅広い適応を持ちます。
ただし一点注意があります。 抗凝固作用については外用では全身への吸収量が極めて少なく、臨床的に問題になる抗凝固作用は原則として生じません。 しかし広範囲の開放創や粘膜への使用時は念のため慎重に。
ヘパリン類似物質は他の外用剤と比べて一般名処方時の調剤ミスリスクが高い成分として知られています。 その背景には3つの構造的問題があります。
① 一般名と実際の剤形名称の不一致
「ヘパリン類似物質軟膏」という一般名なのに後発品の販売名は「ヘパリン類似物質油性クリーム」。 読み間違えると「軟膏」が「クリーム」に、「クリーム」が「軟膏」になる本末転倒な事態が起きます。これが第1の落とし穴です。
② 先発品名とのギャップ
「ヒルドイドソフト軟膏」という先発品名には「ソフト」と「軟膏」が含まれますが、一般名コード上では「軟膏」=「油性クリーム」です。 カルテにヒルドイドソフト軟膏と記載し、レセコンで一般名処方に変換すると「ヘパリン類似物質軟膏」になります。これ自体は正しい変換ですが、薬局で後発品在庫の「ヘパリン類似物質油性クリーム」を選ぶ際に別剤形(クリームO/W型)を選んでしまうリスクがあります。
③ ローション剤における乳剤性・水性の混在
2025年8月の制度改正まで、外用液(ローション)は乳剤性・水性を問わず同一の一般名コードで管理されていました。 そのため処方医の意図(乳剤性のヒルドイドローション系を想定)に反して水性ローションが調剤されるケースが多発していました。
「薬局でのヘパリン類似物質の調剤ミスは他の外用剤より多い」というのが現場の共通認識です。
日本皮膚科学会:ヘパリン類似物質外用液の一般名コード切り分けに関する要望(公式ニュース)
医療従事者にとって最も注意が必要な最新情報が、2025年(令和7年)8月14日に施行されたヘパリン類似物質外用液の一般名コード分割です。
参考)ヘパリン類似物質外用液の一般名マスタの分離について徹底解説!…
変更前後の一般名コード対照
| 変更前 | 変更後 | 代表的な製品 |
|---|---|---|
| ヘパリン類似物質外用液(一括) | ヘパリン類似物質外用液0.3%(乳剤性) | ヒルドイドローション(先発)、一部後発品(NIT、ラクールなど) |
| 同上 | ヘパリン類似物質外用液0.3%(水性) | 後発品の多数(ヘパリン類似物質ローション各種) |
この変更により薬局業務に以下の影響が生じています。
この変更に際し、日本皮膚科学会と日本臨床皮膚科医会が連名で厚生労働省へコード分割を要望していたことも特記すべき点です。 学会が動くほど現場の混乱が大きかったということですね。 令和7年お盆明けの薬局では、この対応に追われた薬剤師が多数いたと報告されています。
アスヤク:ヘパリン類似物質外用液の一般名マスタ分離を徹底解説(薬局対応フローあり)
以下がリサーチ結果に基づく記事です。
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