高齢者は基準値どおりのBUNでも実は脱水が進んでいることがあります。

成人のBUN基準値はおおよそ6~20mg/dLとされています。
参考)https://www.apollohospitals.com/ja/diagnostics-investigations/blood-urea-nitrogen-or-bun-test
はがき1枚分ほどの検査結果票に記された数値が、実は年齢によって解釈を変える必要があるという点が見落とされがちです。
高齢者では加齢とともに腎機能が緩やかに低下するため、成人と同じ基準値でもわずかに高めの値が正常範囲として扱われることがあります。
つまり数値だけを見て異常と判断するのは早計です。
年齢を考慮した個別評価が原則です。
これを怠ると、実際には問題のない患者に過剰な精査や治療介入を行ってしまうリスクがあります。
カルテのアセスメント欄に年齢別の基準を一言メモしておくと、多職種で情報共有しやすくなります。
高齢者のBUN上昇で最も多い原因の一つが脱水です。
BUNは腎臓の尿細管で水とともに再吸収されるため、脱水時にはクレアチニンより先に上昇しやすい性質があります。
高齢者は利尿薬の投与や夏季の発汗増加でBUN/Cre比が20を超えることがよくあります。
これは腎機能そのものの障害ではなく、体内の水分バランスの乱れを反映しているだけの場合が多いです。
意外ですね。
BUN/Cre比10前後が通常の目安ですが、20を超えたら脱水を念頭に置いた問診と輸液対応を検討する場面です。
現場では簡易的な脱水スクリーニングツールやチェックリストを併用すると、判断のばらつきを減らせます。
BUNは糸球体濾過率(GFR)が正常の30%前後まで低下してはじめて明確に上昇するといわれています。
東京ドーム5つ分もの広さがある腎臓のろ過機能のうち、実に7割近くが失われてから初めて数値に反映される計算です。
これは早期の腎機能低下を見逃す落とし穴になります。
BUNだけでは腎障害の早期発見に限界があるということです。
BUNが正常でもGFRはすでに低下している可能性があります。
そのため高齢者のフォローではeGFRやクレアチニンも併せて定期的にチェックするのが基本です。
参考)血液検査のBUN・クレアチニンとは?腎機能との関係と基準値
院内の検査オーダーセットにeGFRを標準で組み込んでおくと、見落とし防止につながります。
高齢者ではBUNが腎機能以外の要因で変動することも多いです。
消化管出血、高蛋白食、感染症による組織崩壊、ステロイド投与などが代表的な腎外性因子です。
たとえば消化管出血では血液中の蛋白成分がそのまま吸収されるため、BUNだけが急上昇することがあります。
Crは変化しないのにBUNだけ上がるのが特徴的なサインです。
〇〇だけ覚えておけばOKです、というほど単純ではありませんが、BUN/Cre比の急激な変動を見たら消化管出血や薬剤性変化を鑑別に入れる姿勢が重要です。
服薬歴の確認とあわせて、消化器症状や便色の変化を問診でチェックする習慣をつけると早期発見につながります。
BUNには日内変動があり、日中は高値、夜間は低値になる傾向があります。
厳密な経過観察を行う場合は早朝空腹時の採血が推奨されます。
高齢者施設や病棟では採血タイミングが日によってばらつきやすく、この変動が「悪化」と誤認されるケースが見られます。
どういうことでしょうか?
採血時間を揃えていないだけで、見かけ上の数値変動が生じている可能性があるということです。
継続フォローする患者については、採血時間帯を記録簿に明記しておくと、数値変化の解釈がぶれにくくなります。
参考)CKDステージと腎機能データを完全攻略!BUN・クレアチニン…