薬価が下がっても、処方ルールを知らないと病院が損をします。

ベクルリー(一般名:レムデシビル、製造販売:ギリアド・サイエンシズ)は、SARS-CoV-2による感染症を対象とした抗ウイルス薬です。 2021年8月12日に初の薬価収載が行われた際の薬価は1瓶(100mg)あたり63,342円でした。
参考)新型コロナ治療薬「レムデシビル」が薬価収載、10月にも流通へ…
その後、費用対効果評価制度の対象品目として審議された結果、2023年6月1日付で61,997円に引き下げ(▲2.1%)されています。 評価区分はH1(市場規模100億円以上)と認定されたことが、引き下げの根拠となりました。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001068213.pdf
2025年4月1日以降の薬価は46,498円となっており、これが現行の薬価です。 収載時と比較すると、約3割の引き下げが行われている計算になります。これは安くなったということですね。
2026年度の薬価制度改革について、中医協総会は2024年12月26日に骨子案を了承しました。 長期収載品の薬価適正化のほか、イノベーション評価の強化が骨子の主要テーマとなっています。
参考)次期薬価制度改革の骨子案を了承 中医協・総会 長期収載品の薬…
| 改定時期 | 薬価(1瓶100mg) | 主な理由 |
|---|---|---|
| 2021年8月(初収載) | 63,342円 | 特例承認→通常収載 |
| 2023年6月 | 61,997円 | 費用対効果評価H1区分(▲2.1%) |
| 2025年4月以降 | 46,498円 | 定期薬価改定 |
現行の添付文書では、ベクルリーはSARS-CoV-2による感染症に対して適応があります。 投与量は成人および体重40kg以上の小児の場合、初日200mg→2日目以降100mgを1日1回の点滴静注です。
参考)ベクルリー点滴静注用100mgの基本情報・添付文書情報 - …
投与期間に関しては、肺炎を有しない患者では3日目までを目安とし、肺炎を有する患者では5日目までが標準で、症状が改善しなければ最大10日間まで継続できます。 「入院したから10日間打つ」という判断は、費用面でも患者負担の面でも過剰になりえます。
体重3.5kg以上40kg未満の小児には体重あたり換算(初日5mg/kg、2日目以降2.5mg/kg)が必要です。 つまり体重の確認が条件です。点滴は生理食塩液に添加し、30分〜120分かけて実施することも規定されています。
ベクルリーは1クール(3〜5日)使用した場合、薬剤費だけで約14万〜23万円相当になります(46,498円×3〜5本計算)。 保険診療での患者負担は3割または1割となりますが、病院としての薬剤費管理は収益に直結します。
多くの医療機関では、適切な投与期間の管理が感染対策の観点とともに「費用対効果の管理」としても重要です。 必要日数を超えた投与は、薬剤費増大につながり、医療保険財政への影響も生じます。意外ですね。
また、ベクルリーの薬価は費用対効果評価の結果によって追加的な引き下げ対象となる可能性があります。 市場規模が再び100億円を超えた場合には再審査のトリガーになるため、流行の状況によっては2026〜2027年以降も薬価変動が続く可能性があります。病院の薬剤部・医事課で定期的に薬価を確認する習慣が重要です。
以下は参考になる厚生労働省の公式資料です。
ベクルリーの費用対効果評価結果と薬価改定の根拠が記載されています。
厚生労働省:ベクルリーの費用対効果評価結果に基づく価格調整(中医協資料)
2026年度薬価算定基準の骨子・最低薬価引き上げ方針が確認できます。
沢井製薬:現場で活かす医療制度トピックス Vol.2(2026年度薬価改定)
処方医・薬剤師が連携して「肺炎合併の有無」を確認し、投与日数を適切に設定することで、不要なコストを回避することができます。 電子カルテ上でのアラート設定や、クリニカルパスへの投与期間指標の組み込みなどが実践的な対策となります。
なお、ベクルリーはRNAポリメラーゼ阻害薬として現在も抗SARS-CoV-2薬として位置づけられています。 2026年時点でも同様の適応で使用が継続されており、他の経口抗ウイルス薬との使い分けは患者の状態(経口摂取可否・腎機能等)によって判断されます。 薬価だけでなく、投与経路・禁忌事項も含めた総合的な判断が現場では求められます。