麻杏甘石湯ツムラ出荷停止の原因と代替薬の選び方

ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒(医療用)はなぜ出荷停止になったのか?代替処方の選択や現場対応まで、医療従事者が知っておくべき情報をまとめました。

麻杏甘石湯ツムラ出荷停止の背景と医療現場の代替対応

ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒(医療用)の出荷停止は、あなたが「別の咳止め漢方に切り替えればすぐ解決」と思っているなら、患者さんへの不利益が生じるリスクがあります。


この記事の3つのポイント
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出荷停止の主因はコロナ禍の需要急増

2023年9月8日より供給停止(C-⑤)が発動。鎮咳薬の供給不安を背景に代替需要が急増し、TJ-55全包装形態が対象となりました。

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証・症状に応じた代替処方の選択が重要

五虎湯(TJ-95)や麦門冬湯などが候補。しかし麻杏甘石湯と生薬構成が異なるため、患者の証(虚実・寒熱)を再確認してから処方変更を検討する必要があります。

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2024年5月中旬に限定出荷解除の情報あり

ツムラ社は増産体制を整え、段階的な出荷再開を進めています。ただし他社製品含め漢方薬全体の供給逼迫は続いており、継続的な情報確認が必要です。


麻杏甘石湯TJ-55の出荷停止はいつから・なぜ起きたのか



ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒(医療用)の出荷停止は、2023年9月8日(金)に正式発動されました。 これはコロナウイルス感染症の流行と、一般的な鎮咳薬の供給不安が重なったことで、代替薬として麻杏甘石湯の需要が想定をはるかに超えて急増したためです。


参考)https://medical.tsumura.co.jp/sites/default/files/media_document/20230908.pdf


対象となった包装形態は4種類すべて——500gボトル、5kgアルミパウチ、標準包装(189包)、小包装(42包)——にわたり、JAN コード4987138805515など全ラインが対象となりました。 つまり「規格を変えれば調達できる」という判断は当初は通用しない状況でした。



出荷停止解除の予定日は当初2023年10月初旬とアナウンスされていました。 しかし実際には長期化し、2024年4月時点では限定出荷が継続、解除が2024年5月中旬と案内された記録が残っています。 約8か月以上にわたって現場への影響が続いたということです。


参考)https://drugshortage.jp/drugdata.php?drugid=139612


ツムラは「1日も早く解除できるよう増産に努める」とコメントし、医療機関および患者への謝罪を文書で表明しています。 事態の背景には、コロナ禍後の需要予測の難しさという業界共通課題があります。




参考)https://x.com/DSJP_info/status/1700113146516828297


参考)https://medical.tsumura.co.jp/sites/default/files/media_document/20240430.pdf


時系列 内容
2023年9月8日 TJ-55ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒(医療用)全包装形態の出荷停止発動(C-⑤)
2023年10月初旬(予定) 当初の解除予定日。実際には延長
2024年4月時点 限定出荷継続中、12品目が対象
2024年5月中旬 限定出荷解除日がアナウンス(分包189包タイプ)


麻杏甘石湯の薬効と構成生薬——代替選択に欠かせない基礎知識

麻杏甘石湯(TJ-55)は麻黄・杏仁・甘草・石膏の4生薬で構成されます。 麻黄が気管支拡張作用を担い、石膏が熱を冷まし口渇を緩和するという役割分担があります。結論として「実証+熱証+汗あり」の患者像が処方ターゲットです。


参考)麻杏甘&#x77F…


体力が中等度以上で、汗をかきやすく、口が渇くという状態の患者に適します。 大人の気管支炎・気管支喘息はもちろん、子どものぜんそくや感冒にも広く用いられてきました。痔の痛み緩和にも使われることがある点は意外と知られていません。



📌 注意すべき副作用として、偽アルドステロン症・ミオパシー・不眠・動悸・頻脈・発汗過多・精神興奮があります。 麻黄含有製剤に共通するリスクです。これが、代替薬を選ぶ際にも「麻黄の量」を意識すべき理由のひとつです。


参考)五虎湯 - Wikipedia


  • 🌿 麻黄(マオウ):気管支拡張・発汗促進。エフェドリン系アルカロイドを含み交感神経刺激作用あり
  • 🌿 杏仁(キョウニン):鎮咳・去痰作用の中心。気管支の痙攣を和らげる
  • 🌿 甘草(カンゾウ):抗炎症・調和作用。グリチルリチンによる偽アルドステロン症のリスクに注意
  • 🌿 石膏(セッコウ):清熱・口渇を和らげる。熱証の患者に必須


麻杏甘石湯出荷停止時の代替処方——五虎湯・麦門冬湯・他剤との比較

代替薬の第一候補は五虎湯(TJ-95)です。 これが原則です。五虎湯は麻杏甘石湯に桑白皮(ソウハクヒ)を加えた処方で、生薬構成が非常に近く、同様の「実証・熱証・汗あり・喘鳴」の患者像に対応します。 桑白皮が上乗せされることで、清肺・降気・利水の作用が強化され、より激しい咳嗽・呼吸困難への対応力が高まります。


参考)https://kampo.med.u-tokai.ac.jp/pdf/kampo_34.pdf


ただし、五虎湯は「中間証の人に用い、高齢者や虚弱な人には用いない」という原則があります。 虚証気味の患者に切り替えた場合、麻杏甘石湯よりも負担が大きくなるリスクがある点は見落としがちです。意外ですね。




参考)新型コロナウイルス流行による漢方薬不足と対策②

薬剤名 麻黄含有 適した証・病態 注意点
🔴 麻杏甘石湯(TJ-55) あり 実証、熱証、汗あり、喘鳴 出荷停止・限定出荷の影響あり
🟠 五虎湯(TJ-95) あり 麻杏甘石湯と類似。激しい喘鳴 高齢者・虚弱者には不向き
🟢 小青竜湯 あり 薄い水様性痰、鼻汁 熱証・口渇がある場合は不向き


医療機関が今すぐ取るべき対応——情報確認・処方変更の実務フロー

出荷停止・限定出荷の最新状況は、ツムラ医療関係者向けサイトで随時更新されています。 まず確認するべき情報源はここです。加えて、医薬品供給情報データベース「DSJP」(drugshortage.jp)でもリアルタイムに包装形態別の出荷状況が確認できます。


参考)302 Found


処方変更を検討する際の流れは「患者の証の再評価→適切な代替薬の選択→患者・家族への説明」の順に進めることが基本です。 単純な「TJ-55→TJ-95への切り替え」だけでは証が合わない患者が生じる可能性があります。これは使えそうな知識です。



  • ✅ ツムラ医療関係者向けサイトの「その他のお知らせ」を定期確認する
  • ✅ DSJPで包装形態ごとの出荷ステータスを確認する(限定出荷と出荷停止は別ステータス)

  • ✅ 代替薬への切り替え前に患者の虚実・寒熱を再評価する
  • ✅ 他社製品(コタロー・クラシエ等)の供給状況も並行して確認する

  • 参考)医療関係者向けサイト

  • ✅ 院内の在庫管理サイクルを短縮し、早期に供給問題を察知できる体制を整える


ツムラ医療関係者向けサイト「その他のお知らせ」——供給状況の公式最新情報が掲載されています


DSJP(医薬品供給情報データベース)——TJ-55の包装形態別リアルタイム出荷状況の確認に活用できます


麻杏甘石湯出荷停止が示す漢方薬サプライチェーンの構造的課題

コロナ禍での鎮咳薬不足が引き金となった点も重要な示唆を含んでいます。 西洋薬の供給不安が漢方薬に需要を転化させ、その漢方薬自体も同様に供給不安を引き起こすという「連鎖的な需要急増」が現場を直撃しました。痛いですね。



医療現場としては、漢方薬の代替処方リストをあらかじめ院内で整備しておくことがリスクヘッジになります。 特定の1品目に過度に依存した処方パターンを避け、証に応じた複数の選択肢を持つことが、今後の供給不安への最も現実的な備えとなります。



PMDA 医療用医薬品情報(ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒)——添付文書の最新版をPDFおよびHTMLで確認できます

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