あなたのARB処方、妊婦なら胎児が命を落とします。

ARBはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(Angiotensin II Receptor Blocker)の略称です。体内で血管を収縮させるアンジオテンシンIIという物質が、AT1受容体に結合するのをブロックすることで血管を広げ、血圧を下げます。
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/4fec1d886fad5de4fc9ef72f0878bec8.pdf
イメージとしては、血管という水道パイプが締まっているのを、蛇口の元栓を緩めて水圧を下げるような働きです。この仕組みのおかげで、心臓や腎臓への負担も同時に軽くなります。
つまり血圧だけでなく臓器も守る薬ということですね。
「高血圧治療ガイドライン2014」では、ARBはACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬と並んで高血圧治療の第一選択薬とされています。特に左室肥大や心不全、慢性腎臓病、糖尿病を合併した患者には積極的な使用が推奨されています。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_10090
高血圧治療における7種類のARBの臨床薬理学的特徴と適応疾患を専門的に解説した記事です。
ARBとACE阻害薬は、どちらもレニン-アンジオテンシン系という同じ血圧調整経路に作用する薬です。しかし作用するポイントが異なります。ACE阻害薬はアンジオテンシンIをIIへ変換する酵素そのものを阻害するのに対し、ARBはできあがったアンジオテンシンIIが受容体に結合する部分をブロックします。
この違いが最も表れるのが「空咳」の副作用です。ACE阻害薬はブラジキニンという物質が増えるため、頻度の差はあるものの全ての製品で空咳が起こり得ます。一方でARBはこの経路に関与しないため、咳の副作用はほとんど見られません。
空咳が出たらACE阻害薬からARBへの切り替えを検討する場合が多いです。飲み始めから数カ月以内に咳が出るケースが典型的です。
また、アンジオテンシンIIの産生には酵素キマーゼも約7割関与しているとされ、ACE阻害薬ではこの経路を抑えられません。ARBはアンジオテンシンIIそのものの作用を抑えるため、産生経路にかかわらず広く効果を発揮できるとされています。
参考)https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/10/di201609.pdf
ARBの副作用として比較的よく見られるのは立ちくらみ、めまい、ふらつきで、頻度はおよそ2%程度です。重大な副作用としては血管性浮腫、腎障害、肝障害、高カリウム血症、ショックや失神が挙げられます。
高カリウム血症は特に高齢者や慢性腎臓病の患者で注意が必要です。ガイドラインでは投与後2週間から1か月以内に血清カリウム濃度とeGFRを測定し、その後も継続的にモニタリングすることが求められています。
参考)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とは?作用機序・一覧…
これは意外と知られていない特徴ですが、ARBは投与量を増やしても副作用の頻度が大きく増加しないという性質があります。降圧効果を強めるために増量しても、リスクが比例して跳ね上がるわけではないということですね。
とはいえ自己判断での増量は禁物です。血液検査でのカリウム値チェックが基本です。
服薬指導の場面では、患者にカリウムを多く含む食品(バナナや干し芋など、目安として1本で約400mg程度)の摂取量にも注意を促すと、高カリウム血症の予防につながります。
ARBとカリウムの関係、高齢者や腎機能低下患者への注意点を図解付きで解説しているページです。
ARBには降圧効果だけでなく、腎保護作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、インスリン感受性改善作用など多くの付加的な効果が報告されています。尿タンパクと糸球体内圧を減少させることで、腎機能の悪化を防ぐ働きも確認されています。
心臓の分野では、心筋梗塞後のリモデリング(心臓の形が変化していく現象)を抑制し、心不全の進行や増悪を抑えることができます。心房細動の発症抑制作用も報告されており、循環器領域では非常に広く使われる薬剤群です。
つまり血圧管理と臓器保護を同時に狙える薬ということですね。
これが基本です。糖尿病やメタボリック症候群を合併した高血圧患者にも積極的な使用が勧められています。
ここが最も注意すべき点です。ARBは全製品において、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌とされています。理由は羊水減少、胎児奇形、最悪の場合は胎児死亡の可能性があるためです。
高血圧の治療を継続している女性が妊娠を希望する、あるいは妊娠に気づいたタイミングで、ARBの服用を続けてしまうケースが臨床現場でも問題になります。妊娠が判明した時点で速やかに薬剤の見直しが必要です。
痛いですね。降圧薬の管理は血圧だけを見ていれば良いわけではありません。
また、アリスキレンフマル酸塩(商品名ラジレス)を投与中の糖尿病患者への使用も禁忌とされ、過度の降圧、腎機能低下、高カリウム血症、非致死性脳卒中のリスク増加が懸念されています。
服薬指導の際には、妊娠可能な年齢の患者に対して「妊娠が分かったらすぐに連絡してください」と一言添えるだけでも、重大なリスクを回避しやすくなります。お薬手帳やアプリでの妊娠可能性チェック欄の活用も一つの方法です。
長時間作用型ARBの添付文書情報で、禁忌事項や重大な副作用の詳細を確認できる一次資料です。
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